2018年1月11日木曜日

【発達凸凹 Book#23】 『これでわかる 大人の発達障害』


発達凸凹に関する本は本当にたくさんあって、この本がベスト!ということは言えません。でも、もしかすると一冊の本が、生きづらさを感じている人の扉を開いてくれるかもしれない…という思いを込めて、本をご紹介します。

本の紹介


『これでわかる 大人の発達障害』
林寧哲=著/成美堂出版

大人になってから発達障害と診断された方が、発達障害についての知識を学び、「生きづらさ」を軽減・解消することを目指して書かれた書籍。見開き2ページに1項目ずつ書かれており、右ページに解説文、左ページにイラストや図が盛り込まれ、読みやすいです。

本書の構成


本書は以下の6つのパートから構成されいます。

Part1.発達障害とは何か
 最新の医学情報をまじえて、発達障害の種類や、それぞれの特徴、症状を解説。発達障害についての理解を深めることができます。

Part2.発達障害の診断
 初診から診断が下るまで、どのような診察や検査があるのかを詳しく紹介。専門医の探し方や受診に必要な準備など、事前に知っておきたい情報を詳しく知ることができます。また、発達障害と診断されたときの心構えも掲載しています。

Part3.発達障害の治療とケア
 薬物療法や精神療法など、発達障害に用いられる治療法やケアの方法を解説。二次障害の基本的な知識と治療方法についても掲載。

Part4.「生きづらさ」に対処するヒント
 生活上の問題がどのような特性から起こっているのかを理解し、「生きづらさ」を軽減するヒントを知ることができます。

Part5.自立した社会生活を営むために
 発達障害の人によく見られる生活上の問題を場面別に分け、苦手を克服するための対処法を具体的にアドバイス。すぐに実践できるノウハウを多数掲載。

Part6.周囲のサポートと公的サービス
 発達障害の人との接し方や具体的なサポートの方法を解説。手帳制度や就労支援などの公的サービスについても紹介しています。また、支援機関や支援制度の利用方法や手続きの仕方も掲載しています。

書評


Part2は、自分の周囲に「もしかしたら自分は発達障害かもしれないので、診断を受けようと思うのだけど…」という方がいたらぜひとも伝えてたい内容だなと思いました。

初診から診断が下るまでにどのような診察や検査があるのかを詳しく紹介されていますが、先の見通しが立たないと不安を覚えるASDの人にとっては有益な情報だとも感じました。

Part5で、発達障害の人は、「できること」「がんばればできること」「努力してもできないこと」があるという話が出てきますが、この3つの見極めは、当事者にも支援者にも求められているなと強く感じました。

当事者が3つの見極めができるようになるには、特性を含めた自分自身を理解することが前提となります。

また、支援者は当事者の特性をよく理解し、どの程度までサポートするのかを当事者と相談していく必要があります。そのような当事者・支援者双方の歩み寄りが重要になりますね。

引用とコメント


以下は書籍からの引用とコメントになります。
「⇒☆」から始まる箇所が引用に対するコメント文です。

知能検査の正規分布をもとにすると、社会は82.2%を占める、普通の人たちで構成されています。お金を稼いで自立するためには、この普通という概念の中に入っていかなければなりません 
そのためには、普通のふるまい方や、普通であるとはどういうことなのかという情報を、できる限り集める必要があります。そのうえで、普通にふるまうことを要求される場面では、「普通であるふり」をするのです。 
しかし、ここで問題が生じます。普通を要求される場面を、どうやって知るのかという問題です。対処方法はひとつしかありません。チャレンジして失敗しながら、試行錯誤を繰り返し、経験を積んでいくことです。
(56ページ) 

⇒☆この、チャレンジして失敗しながら試行錯誤を繰り返し経験を積んでいく過程において、当事者会、特に茶話会やサロンを有効活用できそうですね。その際、まずチャレンジしたことを「Good challenge!」としてほめあえることができれば素敵ですね♪

発達障害の治療には、さまざまなものがあります。どの治療も、主体となるのは発達障害の特性によって起こる「生きづらさ」を軽減するための工夫です。その工夫が適切であれば、すなわちそれは治療になります。 
そのため、発達障害の人には2つのことが必要になります。ひとつは、自分の特性を知る自己理解です。もうひとつは、具体的な問題に対処するための努力を続ける意欲です。
(60ページ )

⇒☆自分の特性を知る自己理解にも、具体的な問題に対処するためにも当事者会が有効な場面がありそうですね。また「努力」という言葉が出てきましたが、具体的な問題に対処すること自体を凸凹当事者が「愉しむ」ことができればいいですよね♪

「当事者会」は発達障害の人同士が集まって交流する場。会話など、コミュニケーション能力の向上を図ることができます。会によっては、男性メンバーが中心で女性メンバーが少ないなど(その逆も)、それぞれに特色があります。 
また、細かいルールや独自のルールを設けているところもあります。入会前に会のルールや様子を確認しておくようにします。 
ピアサポートという言葉は、「同じ立場の人が行うサポート」の意味で、発達障害の人同士で問題解決を考える場。大学によっては学内でピアサポート活動を行っているところもあります。「ピアサポート」という名前がついてる会の中には、当事者会と同様、交流の場となっているところもあります。
(81ページ) 

⇒☆ここ数年で当事者会の数が増えてきましたが、それぞれの当事者の特徴など網羅したウェブサイトもあれば便利ですよね。また、当事者会に初めて参加する人が不安にならないように、会のルールや様子を気軽に、特にネット上で確認できるようにしておくことも必要となってきそうです。

発達障害の人には、「できること」「がんばればできること」「努力してもできないこと」があります。このうち、サポートが必要なのは、「がんばればできること」「努力してもできないこと」の2点です。 
「努力してもできないこと」は、周りの人の全面的な支援や公的な支援が必要です。「がんばればできること」は、本人の努力によって訓練を続ければ習得することが可能です。 
この2点については、特性をよく理解し、どの程度までサポートするのかを、本人と相談しながら判断したいところです。
(141ページ) 

⇒☆この「できること」「「がんばればできること」「努力してもできないこと」の見極めができるようになるためにも、まずは当事者が自己理解を深めていく、そして支援者はそれをサポートすることが重要ですね。

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