2018年4月21日土曜日

【発達凸凹 Book#29】 『発達障害は最強の武器である』



発達凸凹に関する本は本当にたくさんあって、この本がベスト!ということは言えません。でも、もしかすると一冊の本が、生きづらさを感じている人の扉を開いてくれるかもしれない…という思いを込めて、本をご紹介します。

本の紹介


『発達障害は最強の武器である』
成毛眞=著/SB新書

著書の成毛眞氏は、おすすめ本を紹介する書評サイト「HONZ」の代表を務めています。自己診断によるADHDの傾向が強い著者。自身の人生を振り返りつつ、「ADHDはもし矯正しなくて済むものなら、矯正しないほうが幸せに生きられる」というメッセージが込められています。

精神科医の香山リカ氏、和田秀樹氏との対談も掲載。第1章の章末では、「それはADHDの特徴ですね」というタイトルで香山リカ氏が登場。第3章の章末では、「僕も子どもの頃、教室をふらついていた」というタイトルで和田秀樹氏が登場します。

本書の構成をご紹介


本書の構成は以下のようになっています。
序章 これからの時代、周りの人と違ってなんぼ
第1章 飽きっぽい自分とのつき合い方
第2章 IT業界は発達障害者だらけ?
第3章 発達障害の子どもの可能性を考える
第4章 空気が読めなくたっていいじゃない
第5章 社会人としてADHDの特性を発揮

書評


発達障害者こそこれからの時代に求められる人材


まず、本書のタイトルが希望にあふれるものだったので、思わず衝動買い^^;
著者は、「これからの時代、周囲の人たちと違ってなんぼ。一風変わったものの見方や感性をもった人のほうが活躍する時代」と指摘しています。

その上で、「『進取の精神に富み、過去の失敗に囚われず、思いついたことは何でもやってみる』という特性を持つ人が多い発達障害者こそ、これからの時代に求められる人材であるという主張には、「うん、うん」と思わず頷いてしまいました~♪

マイクロソフト社の幹部会で目撃した光景


第2章で述べられている、著者がマイクロソフト本社の幹部会で目撃したビル・ゲイツのエピソード(奇行?)は抱腹絶倒もの♪

「当時のアメリカ本社の幹部会を見ていると、このまま全員病院行きになるんじゃないかと怖くなることがあった」という著者の述懐が、そのエピソードの強烈さを物語っています。

第3章では、"ADHD風味"かもしれない自身の娘さんへの関わり方について述べています。「『これは自分の興味のあることではない』という答えが出たらすぐにやめさせる」という方針が、ADHDの特性を持つ子どもにはとても有効だなと感じました。

衝動性・過集中の特性をフルに発揮した社会時代


第5章では、著者が衝動性や過集中といったADHDの特性をフルに発揮した社会人時代のエピソードが興味深く、また胸をすく内容です。

自身が勤めていたのが日産系列だったにもかかわらず、トヨタ系列のアイシン精機に三菱自動車のミラージュに乗って売り込みをかけにいったのは、衝動性の極み!でも、その衝動性と行動力が、「面白い」と営業先の担当者に評価され、無事商談成立。

また、著者は、誰からも頼まれていないし、営業の仕事に役立つわけでもないのに、無段階変速機に関する特許を徹底的に集めてコピーし、ファイリングすることに熱中していきます。

後日、日産自動車からの「無段階変速機を造れるか」という突然の打診がされた際に、そのファイルがそのまま日産に送られ、無段階変速機部品の受注に成功し、会社の危機を救ったのでした。

引用とコメント


以下は書籍からの引用とコメントになります。
「⇒☆」から始まる箇所が引用に対するコメント文です。

私はこれからの時代、周囲の人たちと違ってなんぼだと思っている。すべての能力が平均的でマスプロダクションにしか適用できない人に比べて、一風変わったものの見方や感性をもった人の方が活躍する時代だと思う。
(19ページ)

⇒☆一風変わったものの見方や感性を面白いと思い、それらを尊重できる社会になれば素敵ですね♪凸凹フューチャーセンターもOne day cafe.kyotoや「話の見える化」といったイベントを通じて、そのような社会の実現にチャレンジしていきたいと思います!

誤解を恐れずに言おう。私が伝えたいメッセージは、ごくシンプルだ。「ADHDはもし矯正しなくて済むものなら、矯正しないほうが幸せに生きられる」
(20ページ)

⇒☆矯正しようとしてより過酷な生き方を選んでしまって、途中で燃え尽きたり、過剰適応してしまう人も多いと思います。障害があるのは社会システムや制度の方であり、多様なステークホルダーとゆるく連携しながら、それらを変えていく必要性を多くの人に知ってもらいたいと思いました。

税関では当然、「他の荷物を取ってこい」みたいなことを言われる。紙袋ひとつで日本からやってくる者などいないからだろう。「この紙袋だけだ」と答えると、かえって怪しく思われ、問い詰められる。  
だが、勤め先を聞かれ、マイクロソフトだと言うと、「ああ…」と妙に納得される。「マイクロソフトじゃしょうがない。こういう人が多いからね」 社名を口にした途端、無罪放免となるのだ。  
後に詳しく語ることになるが、マイクロソフト、いやIT業界には発達障害を抱える人の割合が高いと私は感じている。 シアトルの空港職員も、経験的にマイクロソフト関係者の奇妙な言動に慣れているのだろう。とにかく社名を出せば無罪放免されるのが、その証拠だ。
(32ページ)

⇒☆シアトル空港職員のように、発達障害の人の、一見奇妙と思える行動への理解というか、寛容さをもっと多くの人がもつようになれば素敵ですね♪

そういう(時間感覚を管理できない;註)連中と飲み会の待ち合わせをするときは、あえて意表をつく場所を設定するのがコツだ。 
赤坂や六本木などの有名な歓楽街ではなく、北区の尾久など下町の店で待ち合わせると、案外みんなやってくる。普段は足を向けることのない非日常的な場所であるほど、記憶に引っかかりやすいのかもしれない。
(35ページ)

⇒☆なるほど~。もしかしたら、時間間隔は管理できないけど地図を読むのが苦手ではない人向けかもです。
意表をついたのはいいが、地理的に分かりにくい場所を指定した場合、認知機能の凸凹故に地図が読めない人は道に迷って、結果的に遅刻することが予想されますが^^;

神経生物学者スーザン・バリーは、両眼立体視の能力が低い場合、二次元の視覚情報でものが重なり合って見えるため、近くに散らばっているものが気になって仕方がなくなる傾向があると著書で述べている。 
それが原因かわからないが、私はものの角が揃っているかどうかが非常に気になる。目の前で話している人のノートや本がテーブルの直線に対して斜めに置かれていたりすると、気になって仕方がない。
(36ページ)

⇒☆気になって仕方がないから、目の前で話している人の話の内容が頭に入ってこないと。正に、「発達凸凹あるある」ですね♪

香山(リカ;註):私が診察室で一番苦労されているなと思うのは主婦の方。片づけとか子育てとか、発達障害の人にとって一番苦手とされることを要求されていますから。
(63ページ)

⇒☆発達障害を持つ主婦の方が苦手としていることを代替するツールやサービスへの需要は大きいと思われますし、ある意味でビジネスチャンスですね♪

香山:矯正して社会に適応するのと、矯正しないままで生きていくのではどちらがいいんでしょうか。
成毛:僕は矯正しなくていいんだったら、そのほうが幸せだと思います。
香山:あるいは、矯正しようと思えば、脳は可塑性があるから自然に矯正できるということですね。
(69ページ)

⇒☆努力とか根性で矯正しようとするのではなく、矯正する過程を愉しむ。もしくは小さな成果を感じられるような過程を踏んでいけば、脳の可塑性に委ねて、より生きやすくなるのではと思いました♪

香山:自分を分かってくれる場所を探すということを、モチベーションをもってやってほしいと思います。
(74ページ)

⇒☆その自分をわかってくれる場所の候補として、当事者会が挙がれば嬉しいし、最終的には自分を活かす場所を作る、そしてその過程を愉しめる人がどんどん増えていってほしいと思います♪

(マイクロソフト本社の;註)幹部はビル(・ゲイツ;註)が座る側に並び、会議にはじめて参加する社員は、上座の奥の席に座らされる。だから、周囲の幹部は新参者の社員に必ずこうアドバイスをする。 
「ビルを見ちゃだめだぞ。見続けていると船酔いするからな」5分、10分なら我慢もできる。しかし、1時間ずっと動き続ける人間を見ていると、三半規管が狂って"船酔い"のような状態になってしまう。
(90ページ)

⇒☆ビル・ゲイツの多動性を物語る強烈なエピソード!

「鈍」。これは、基本的にものごとを覚えていないということ。怒ったことも、うまくいったことも、総じて覚えていないというのは、案外重要なことだ。
(98ページ)

⇒☆確かにいい意味で「忘れる」ことは、精神衛生的にもいいのかもしれませんね。

最後の「根」。これは根性という意味ではなく、単に「ハマる」ということ。一度集中したら、その行動を止めることができない状態、つまり「過集中」ということだ。 
(中略)「好きになる」というのは、「ハマる」ということ。これもまたADHDの特質のひとつ「過集中」なのである。
(100ページ)

⇒☆「過集中」になる対象を見つけるだけでも、人生がずっと、ぐっと生きやすくなると思いました♪

あらゆるものが比較的安いコストで体験できるなら、興味のあるものが見つかるまでどんどん体験していけばいい。飽きたらそこで止めても全く構わない。
(113ページ)

⇒☆「やりたいと言ったからには最後までやり通す」というのが馬鹿らしく思えてきました^^;

普通の人間が経営者になるのは難しくなってくるはずだ。進取の精神に富み、過去の失敗に囚われず、思いついたことは何でもやってみる。これはまさに、発達障害を抱える多くの人が持つ特性だ。 
つまり、ADHDやアスペルガー症候群といった人々こそ、これからの時代にこそ求める人材ではないだろうか・そんな予感を私は持っている。
(129ページ)

⇒☆これからは、発達凸凹のある人がリスクに怯えることなく、もっと軽やかに経営者を目指す仕組みを今後構築する必要がありますね。

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