発達凸凹に関する本は本当にたくさんあって、この本がベスト!ということは言えません。
でも、もしかすると一冊の本が、生きづらさを感じている人の扉を開いてくれるかもしれない…という思いを込めて、本をご紹介します。
本の紹介
『私たちは生きづらさを抱えている』
姫野桂=著・五十嵐良雄=監修/イースト・プレス
本書は、発達障害の特性による生き辛さをテーマに、発達障害当事者22人に取材を行い、彼らの生きづらさをリアルに洗い出した一冊になります。
また、書き下ろしとして、「自分も発達障害かも」と疑う著者が心療内科を受診し、検査を受ける体験も収録されています。
書評
発達障害専門の医師が発達障害の知識や特性を解説した書籍は多くありますが、本書のように多くの当事者(その数22名!)に取材を行い、当事者がそれぞれ抱える生きづらさをリアルに洗い出した書籍は珍しく、本書の貴重さを感じます。
本書のもう一つの特徴は、「自分も発達障害かも」と疑う著書が、心療内科を受診し、検査を受ける体験が詳細に書かれていることです。
診察での医師とのやり取りや心理検査の内容が詳しく書かれていて、「検査を受けるかどうか迷っている」「検査ではどんなことをするのか」と不安を感じている人にとって大いに参考になります。
また、「知っておきたい発達障害の基礎知識」というコーナーがあり、そこでは、発達障害の種類などといった基礎知識が簡潔にまとめられているのも有益だなと思いました。
引用とコメント
以下は書籍からの引用とコメントになります。
「⇒☆」から始まる箇所が引用に対するコメント文です。
当事者の悩みで一番多かったのが、マルチタスクが苦手だったり、職場の人と良好なコミュニケーションが取れなかったりして、仕事が続かないこと。
次いで、二次障害によるうつ病や睡眠障害、自律神経失調症、発達障害の特性により引き起こす可能性のあるギャンブル依存症や買い物依存症、性依存症などだった。
体調が悪くて病院を受診したら、その体調不良は発達障害が引き起こした二次障害だと判明したケースも珍しくなかった。
この本により、当事者の現状や本音が少しでも多くの人に誤解なく伝わり、生きづらさの緩和への道が開ければと思う。
(5ページ)
⇒☆二次障害のうつや睡眠障害は結構認知度が上がったと思いますが、ギャンブルや買い物、性への依存症が多いということはまだまだ認知症が低いように思います。
また、生きづらさの緩和への道を開くことに、当事者も定型発達の人も関われるような仕組みがあればいいですね。
周りが楽しそうにしていても、自分には何が面白いのかがわからない。自分の好きなことややりたいことを一生懸命語っても、相手に響かない。そのようなズレは発達障害の人にしかわからない。
(42ページ)
⇒☆自分の好きなことややりたいことを一生懸命語っていても、全然伝わってないことってありますよね。また、発達障害者同士でも、このようなズレが往々にしてあるように感じます。
グラフィック・ファシリテーションがそのズレを解消する一つの方法として認知されれば嬉しいですね♪
「私たちはお互い真逆の夫婦なんです」とショウタさんは語る。発達障害にはできることとできないことの差が激しいという特徴があるが、お互い真逆なおかげで、苦手な面を補い合って生活できているという。 (中略)
入籍する前、半年間ほど同棲をして、お互い何が得意で何が苦手なのかを見る機会を作りました。そしてお互い得意・不得意をよく知ったうえで、今は暮らしています。 (中略)
もちろんふたりとも共通して苦手なことはあります。片付けに関してはふたりとも苦手ですが、僕は体調を崩しちゃうくらい苦手なんですよ。そこは、程度を見てどちらがやるか決めています。
(66ページ)
⇒☆まずはお互いの得意・不得意をよく知る。そして苦手な面を補い合う。素敵な共同生活♪また、ふたりとも共通して苦手なことは、思い切って他の人に頼んだり外注したりしていくことも、持続可能な共同生活を送る上で大切かもと感じました。
今回の取材は「口下手なので、あらかじめ話す内容をまとめてきました」と、アユミさんはA4用紙10枚にも上る「自分史」を書いてきてくれた。
その様子をショウタさんは「当事者自身が自分の障害を正しく理解することは重要。妻はすごいと思う。自分で理解することが周りに理解してもらう近道なのでは」と語っていた。
(70ページ)
⇒☆「自分史」を書けるということがまずすごいですよね!そしてそのことを素直に「すごい」と賞賛できるショウタさんも素晴らしいと思います♪
『必要なものだけ買いなさい』と言われても、私には全部必要なものに思えるんです。優先順位があいまいなんでしょうね。
(74ページ)
⇒☆衝動買いとか片付けができないというのも、「優先順位があいまい」という特性を抱えている人に多いのかもしれないですね。
ADHDの人はその衝動性からニコチンやアルコール、ギャンブルや性といった依存症に陥る確率が定型発達の人の2倍という研究結果が出ている。
(74ページ)
⇒☆このデータ自体がもっと多くの人に広まればと思いました。依存症に陥ったことを「自分の意志が弱いから」というように、必要以上に自分を責めることも、このデータを知ることで少なくなると感じます。
ADHDの特性のひとつである『ポップコーン現象』というものだと医師が言っていたのですが、頭を中でポップコーンが弾けるように、様々な考えが浮かんでいくんです。
(87ページ)
⇒☆いわゆる「脳内多動」という、ADHDの人によく見られる現象かも。それにしても、キャッチーなネーミングですね♪
自助会が合わないと感じた人や、発達障害に限らず生きづらさを感じている人が気軽に集えたらいいなと。
(125ページ)
⇒☆「発達障害に限らず生きづらさを感じている人が気軽に集える」のが発達障害BAR The BRATsだとしたら、「生きづらさを感じている人を含めた様々人が対話するために集える」のがOne day cafe.kyotoなのかもしれないなと思いました。
僕は「発達障害の自分はマイノリティだ」という意識がすごく苦手です。「私はマイノリティだから」、自らを社会から隔離してしまっているような。
そういう側面が、このマイノリティという概念をブラックボックス化しているように感じるからです。
マイノリティに見られるように自らパフォーマティブに振る舞うことで、二重の共犯関係が生まれているのではないでしょうか。
(129ページ)
⇒☆「自分はマイノリティかどうか」ではなく、「相手も私も違う一人の人間である」という多様性の観点から始めていくことが大切かもと思いました。
ちょっと言葉遊びになってしまいますが、体験と経験をきちんと区分けすることは重要かなと。体験を自分のなかに組み込まないと経験にならないと思うんです。
だから、体験だけを積み重ねている人は成長しないと思います。体験をいかに経験にするか、です。
自分のなかに体験を入れていって、言語化していくなかで他人との共通点を見つけられる状態が経験だからね。
(142ページ)
⇒☆何かを体験した後にその体験を自分自身の中でRethinkする、もしくは他の人と語る。そこで得られた気づきを言語化していくことで体験を経験にできるんじゃないかなと思いました。
そういう意味で、One day cafe.kyotoでの「対話の場」は、「体験を経験にする」ステージの一つかもしれませんね♪
僕のなかでは社会が受け皿を作るというより、もっと主体的に「自分の特性はこうだ」と示して、自分で作っていくものかなと思う。
そのなかで受け入れられるためには「お互いこういう努力をしましょう」と交渉をしますし、その上で相手が望むパフォーマンス以上のものを提示すれば、リターンは確実に来ますから。
そうやって自分の場所を僕は守っているつもりです。
(144ページ)
⇒☆社会に受け皿を要求するのではなく、まずは自分で作っていく。そしてできれば他の人と一緒に作り上げること、その作り上げる過程を一緒に愉しむということができたら素敵ですね♪
今、定型発達の人は「君たちは扱いづらい」、発達障害人は「もっと配慮して」と言う、お互いにドッジボールをしているんですよね
(146ページ)
⇒☆この「お互いにドッジボールしている」っていう指摘、すごく納得しました。少なくともOne day cafe.kyotoでは、定型発達・発達障害を問わず多くの人が、ドッジボールではなく、「キャッチボール」を対話を通じて愉しんでほしいですね♪
バーの名前である「BRATs」ってそういう意味も含めています。直訳すると「悪ガキ」ですが、それを自分たちで名乗るところに意味を見出しています。
「お前たち悪ガキだろ?」と言われたとき「いや、違うよ。障害なんだよ」と言ったら攻撃なんです。だから、こちらは度量を見せて「うん、悪ガキだよ!」って言いたいです。
やっと中二病を出した(笑)
(147ページ)
⇒☆この「悪ガキなんだよ!」って自ら名乗ること、そしてそれを愉しむ度量と余裕!この感覚、素敵♪
セックス依存症は女性に多い病です。特に薬物依存症や性虐待を生き延びた女性に多く見られ、不特定多数の異性と関係を持つこと自体が、彼女らに一時的な心の安定をもたらします。
心理的苦痛や不安を解消するため、または心的外傷への対処行動として彼女らは、その行動を繰り返し、やめられないのです。(『男が痴漢になる理由』p.47)
( 153ページ)
⇒☆セックス依存症は女性に多い病であること、そして心理的苦痛や不安を解消するため、または心的外傷の対処行動として繰り返して止められないということをもっと多くの人に知ってもらいたいと思いました。
定型発達の人と比べると、当事者のほうが性について話したい人と話したくない人の差が激しい傾向にあります。当事者のなかでも、もっと性について語れる場を増やしていきたいです。
性って本来すごく大事なことに全然話せていない。『それならば、性について話したい人だけが集まればいいじゃん』と思われるかもしれませんが、そうなると今度はその人たち同士でどういう距離感で話せばいいかという問題が生まれます。(中略)
自助会のようなクローズドな場はたくさんある一方、オープンな場は発達障害バーくらいしかありません。だから、自助会でもなく饒舌な交流会の場でもなく『自助会以上、居場所未満』の中間層を今後作っていきたいです。
発達障害の人に向けて、性の悩みや性被害を少しでもなくしていけたらと思います。
(156ページ)
⇒☆この「自助会以上、居場所未満」という中間層が、今エデン大阪やエデン京都などを中心に徐々に増えてきていますね。
ハーバード大学を卒業された『ポジティブ心理学』の第一人者ジョン・エイカー氏が、スーパープレゼンテーションで『就職(成功)したら幸せになる時代ではない。幸せになったら成功できる時代だ」と言っていました。
幸せに感じたところから自己受容が起こり、自己肯定感が高まって、自己開示につながり。そして相手のために自己表現をすることで他者と繋がっていくので、結果的に"就労"という形になるんです。
自己受容がはじまる前段階で、無理やり就職をしても長続きすることはかなり難しいと感じています。
(192ページ)
⇒☆「自己受容がはじまる前段階」。これはセルフアドボカシーが重要ということを言っているような気がしました。
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