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2018年9月18日火曜日

【発達凸凹 Book#35】 『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 女性の発達障害』



発達凸凹に関する本は本当にたくさんあって、この本がベスト!ということは言えません。でも、もしかすると一冊の本が、生きづらさを感じている人の扉を開いてくれるかもしれない…という思いを込めて、本をご紹介します。

本の紹介


『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 女性の発達障害』
宮尾益知=監修/河出書房新社

発達障害の女性は、女性特有のさまざまな"生きづらさ"や"ズレ"を抱えている場合があります。特に思春期以降、友人問題や恋愛、就職などのさまざまな問題に直面した時、上手に対応できずに悩み苦しんでいる場合もあると思います。

本書は、そんな発達障害の女性を理解して家庭や職場での対応策や適切なサポートの方法を解説した一冊です。

書評


本書は、発達凸凹Bookとして過去にも紹介した「親子で理解する特性シリーズ」の1つになります。
以下に過去に紹介した書籍を記します。

発達凸凹Book#15 『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 職場の発達障害』


発達凸凹Book#27 『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 大人の発達障害 日常生活編』

本シリーズは、見開きページ毎にトピックスが完結していることや大きなイラストが多数収録されていることが特徴です。そのため、女性の発達障害について読みやすくて理解しやすい構成となっているのが嬉しいですね♪

また、発達障害の女性特有の"生きづらさ"や"ズレ"に対しての対応策やサポートについて、具体的に書かれているのも重宝しますね♪

引用とコメント


以下は書籍からの引用とコメントになります。
「⇒☆」から始まる箇所が引用に対するコメント文です。

例えば ASD(アスペルガー症候群)には、大きく3つのタイプに分けることができます。 
1●積極奇異型 
知らない人にも平気で話しかけたり、なれなれしく接したりする。 
2●受身型 
自分から積極的に接触を図ろうとしないが、誘われれば付き合うタイプ。女性に多いと言われています。 
3●孤立型 
他人と話したり関わったりすることに苦痛を感じ一人でいることを好む。 
 一般的に子供の時は1のタイプが多く、思春期から大人になるにつれて2や3のタイプに性格が変化していくケースがあります。 
女性の場合は、小学校中学年ぐらいから2や3のタイプに性格が変化していくケースが多いと言われています。 
(10ページ)
(ASDの;註)女性の場合は、思春期前後になると空気が読めず周囲に馴染めなかったり孤立してしまうことがあります。 
(23ページ)
⇒☆女性の場合、思春期の前後に周囲に馴染めなかったり孤立しまうことが、その後の生きづらさにも直結しやすくなるのかも知れませんね。

ADHDは、男性より女性に多い発達障害ともいわれていますが、その理由はまだわかっていません。 
(25ページ)
⇒☆「ADHDは男性よりも女性に多い」という理由がまだわかっていないのは、本当に興味深いです!


いわゆるガールズトークですが、不十分な説明と言葉と非言語コミュニケーションが時と場所を選ばず行われていくということですが。発達障害の女性には、最も苦手なことだと思います。 
私も以前、女性会SSTを企画しましたが、内容を聞いて、会話の移り変わりの激しさに諦めてしまいました。 
(29ページ)
人の話を聞く姿勢、相づちの打ち方、皆に有用な情報など引き出しをいくつか用意しておいて使ってみる努力をしつつ、一人でも良いと思う気持ちを持つようにした方が良いと思います。 
そのような気持ちの持ち主が複数いると、人間関係の悩みを半減するはずです。 
(29ページ)
⇒☆一人でも良いし、「何が何でもみんなと仲良くしなきゃならない」という思い込みから解放されることで、楽になることが多いと思われますね。


大学では、多くの学生が5月頃に第一の危機が訪れます。何もかもうまくいかなくなって、どうしたら良いかわからなくなります。 
まだ本当に相談する人はいませんし、「どれくらい」といった適当という言葉もわかりません。 
そういう時は、思い切って休んでみましょう。引きこもり、どこかに出かける。期間は2週間程度が適切です。罪悪感は持たず、あたり前のようにこの時間を取ることで、その後の大変な状況を免れることはできます。 
(30ページ)
⇒☆期間を限定して罪悪感を持たずに引きこもる「積極的引きこもり」。確かに有効かもですね♪
(アスペルガー症候群の;註)女性の場合は幼児期にほとんど特性を目立たず、10歳前後になってきて、他人との「ズレ」を感じはじめることが多いようです。 
(32ページ)
(アスペルガー症候群の中;註)男の子の場合、「積極奇異型」といって特性が問題行動に現れるケースが多いということもあります。 
それに対して女の子は、自分から行動を起こすより人に指示された通りに行動したり、言われたことを素直に信じてしまう「受動型」が多いという面もあるようです。 
(33ページ)
⇒☆女性のアスペルガー症候群特有の、「ズレ」の出現や「受動型の多さ」のことに対する認知度がもっと上がれて周囲のサポートを受けやすくなると思います。
(孤立してしまうことへの;註)サポートと対応法 アスペルガー症候群の女性に対しては、特性を理解してあげることがサポートの基本です。 
 交友関係 
1.社会性の問題からグループ意識と仲間との関係性を結びにくい面があります。無理に友達と遊ばなくてもいい、ということを説明します 
2.無理に友達はつくらず理解してくれる友だちを一人でも見つけてあげるようにしましょう。 
3.一人でも好きな趣味などあれば、認めてあげることで落ち着いてくる場合があります。 
 会話 
1.「今日はどうする?」→「調べたいものがあるから図書館へ行こう」というように、あいまいな表現ではなく。理由を付け加えて具体的に何をするか話す 
2.冗談や言葉の裏を読めないこともあるので、はっきり理解できる言葉を使う 
3.相手の言うことを聞かず一方的に話す場合は、話をさえぎらず、聞いてあげる姿勢も必要です。 
周囲が理解する 
アスペルガー症候群の女性は、相手が怒っているのか笑っているのか表情が読めない場合もあります。強い口調は、すべて怒っているように理解してしまいます・特性を説明して、周囲に理解してもらうことが重要です。 
(35ページ)
(アスペルガー症候群の女性が;註)自分に合った医療機関を探すポイントは二つあります。一つは発達障害に詳しいこと。そして体調不良を治療してくれるかということです。 
アスペルガー症候群の女性は、男性よりも体調不良になりやすいという特徴があり、この二つを兼ね備えている医療機関を選ぶと安心です。 
(40ページ)
コミュニケーションで失敗して大きなストレスを抱えている人は、ペットを飼うことでリラックスできる人もいます。ペットを相手に話すことを日課にすることでホッとする人は多いようです。 
  • 犬や猫に限らず、金魚や亀など飼いやすいペットを選ぶ 
  • ペットに話すことでコミュニケーション不足が補える 
  • ペット仲間と共通の話題ができ、新たな友達ができることもある 
(43ページ)
ADHDの女性は、特性による行動に強いコンプレックスを感じて、自分の周りの女性や世間が求める理想の女性を目指して必要以上に頑張ってしまう場合があります。 
(中略)大事なことは自分にとって精神的な重荷にならない生き方や暮らし方とは何かを考え、見つけることです。 
完ぺきを目指して失敗を重ねるより「失敗してもいい」「多少いい加減でもいい」と自分を許して楽になりましょう。 
(68ページ)
⇒☆小さな失敗をたくさん経験できる場を作っていくことがますます求められるなと感じました。
(手前味噌ですが、)コミュニケーションといった対人場面での小さな失敗は、One day cafe.kyotoでたくさん経験し、それと同時に小さな失敗を自分も周囲の人も受け止める機会を持ってもらえれば♪

「恥ずかしいこと」とは何かを説明することも必要ですが、社会的なルールとしてこのような行動はしてはいけない、ということを明確に教えてあげる必要があります。 
間違いを指摘したり、ただ恥ずかしいことを伝えたりではなく、具体的にどう行動すればよいのかを示すことがサポートにつながります。 
(74ページ)
⇒☆アスペルガー症候群に対してはルールとして教える、もしくはそれを文章化して伝える方がより伝わる気がします。

2018年6月30日土曜日

【発達凸凹 Book#33】『隠れアスペルガーでもできる幸せな恋愛』




発達凸凹に関する本は本当にたくさんあって、この本がベスト!ということは言えません。でも、もしかすると一冊の本が、生きづらさを感じている人の扉を開いてくれるかもしれない…という思いを込めて、本をご紹介します。

本の紹介


『隠れアスペルガーでもできる幸せな恋愛
吉濱ツトム=著/KKベストセラーズ

発達障害を専門にしているカウンセラーである吉濱ツトム氏が、「恋愛難民」のアスペルガー人に向けて書いた書籍です。

以下に本書の構成を記します。
序章 ケーススタディ・恋愛に苦しむ難民たち
第1章 なぜあなたは「恋愛難民」になってしまうのか
第2章 あなたが恋愛できない本当の理由(恋愛逃避型・コミュ障型)
第3章 トラブル続きの恋愛パターン(共依存型・刺激追求型)
第4章 アスペでもできる!吉濱式恋愛トレーニング


書評


チェックリストで恋愛タイプや過去の恋愛パターンを把握できる


本書には、様々なチェックリストが登場します。
それらのチェックリストを実行することで、自身の恋愛タイプを把握したり、恋愛下手につながる言動を自覚したりすることができるのが便利だと感じました。

自身の恋愛タイプや傾向、過去の恋愛パターンを把握することで、否定的な認知を是正する、対人緊張をやわらげるといった「吉濱式恋愛トレーニング」の効果が上がることが期待されます。

「試行回数を重ね、経験を積み、成功率が上がる」恋愛トレーニング


「吉濱式恋愛トレーニング」は、ソーシャルスキルトレーニング(SST)を下敷きに、行動療法や認知療法を取り入れた科学的でシステマティックなアプローチになっています。

「理論的な説明⇒具体的なテクニックやコツを紹介」という構成になっていますので、すぐに恋愛トレーニングとして、テクニックやコツを実践できるようになっています。

「試行回数を重ね、経験を積んでいくことで成功率が上がる」と説く吉濱氏のコンセプトに正に合致しているなと感じました。


引用とコメント


以下は書籍からの引用とコメントになります。
「⇒☆」から始まる箇所が引用に対するコメント文です。

真正ではないグレーゾーンのアスペルガー、「隠れアスペルガー」は、日本人の40~50人に1人くらいいると推計されます(『ガイドブック アスペルガー症候群ー親と専門家のために』トニー・アトウッド著、東京書籍、1999年)。 
発達障害の人を数多く見てきた僕の実感としては、20人に1人くらいは隠れアスペルガーだと言っていいほど、最近とても増えてきています。 
ちなみに、ADHDと診断される人は40~50人に1人ですが、軽度のADHDは10人に1人くらいだと言われています。
(54ページ)
⇒☆グレーゾーン故に本人にも自覚がない人が多いのだろうなと思われますし、それ故により生きづらさを感じたり、周囲に相談できずに一人で抱え込んでしまうことも予想できます。

僕は、アスペルガーの人たちには安定した恋愛ができるようになってもらいたいと思っています。アスペルガーの人が楽しく幸せな恋愛をするためには、アスペルガーやその症状についての知識と、トレーニングが不可欠です。
(74ページ)
⇒☆だからこの本ではまず、アスペルガーやその症状についての知識を説いた上で、恋愛に関するトレーニングについて解説するという構成になってのでしょう♪

あなたには、もっとコミュニケーション能力を発揮できる場があるのです。自分の意識や性格に責任を負わせるのではなく、環境を変えましょう。これだけで、恋愛というハードルは一気に下がります。
(113ページ)
⇒☆なるほど!コミュニケーション能力をより発揮できる環境に自分を移す。身軽になれる考え方ですね。♪

僕は、恋愛を成就させるために必要なのは、何よりも自信を持つことだと思っています。そのためにも、手っ取り早くテクニックを身につけて、何回も試行してほしい。 成功体験を積み重ねていけば、少しずつ「自分にも恋愛ができるんだ」という自信が芽生えてきます。
(125ページ)
⇒☆「手っ取り早いテクニック」と言うと誤解があるのかもしれませんね。「恋愛の技法」と捉えるようにする、より抵抗なく受け入れられそうですね♪

幼少期の体験や両親との関係を癒したり修復させなくても、次章で紹介するテクニックを身につければ、共依存型の恋愛パターンから抜け出すことは可能です。「自分は家庭内ストックホルム症候群に陥っていたんだ」と自覚するだけで十分なので、ぜひそのことに気づいてください。
(135ページ)
⇒☆幼少期の体験や両親との関係について内面を深く見つめ直そうとして、必死にもがいている人を当事者会で見ることがありますが、こと恋愛に関しては自覚を持って後はテクニックを身につけていけばいいようですね。

仮にトラウマが影響しているとしても、過去を探求したところで何も解決しません。そんなことより、認知療法で歪んだ認知を客観視できるようにしたほうが、よほど建設的です。自分の内面に目を向けるより、「どうすれば改善できるか」を具体的に考え。行動することを心がけましょう。
(177ページ)
⇒☆歪んだ認知を客観視することの重要性を、トラウマやアダルトチルドレンで苦しんでいる当事者にもっと知ってほしいと思いました!


 「明日〇〇さんとのデートだから、今そのことを想像しているんだ。それで今、緊張してきちゃったのね。もし会話が途切れたらどうしようって心配なのね、なるほど。……」 
 このように、浮かんできた感情、思考、イメージ、記憶をひたすら実況中継します。口に出して言うのがベストですが、心の中で言葉にするだけでも構いません。最初のうちはなかなかうまくいきませんが、根気よく続けていきましょう。しだいに否定的なイメージが浮かびにくくなっていきます。 
(実況中継テクニックには;註)緊張する自分を、一歩下がって第三者の目で見てみると、実体のない恐怖を過剰に膨らませていたことに気づくのです。と同時に、メタ認知を開発することにもつながります。
(193~194ページ)
⇒☆この「実況中継テクニック」をもっと多くの人が知れば、よりメタ認知がしやすくなる人が増えると思いました♪

 人間というものは、自分を投影することでしか他人を見ることができません。自分のことを無価値だと思う人は、結局、他人の価値も認められない。つまり、自分を愛せないアスペルガーは、他人も愛せないということです。 
 こう言うと、多くの人は「自分を無条件に愛せるようにならなければ、恋愛できないんだ」と極端な解釈をします。自分を無条件に愛することなんて、普通はできませんし、ましてやアスペルガーは、自分への否定的感情が強化されているので、自分を愛するなんて至難の技です。 
 まずは自分を「ちょっと好き」程度で構いません。恋愛トレーニングによって少し劣等感が抑えられたら、ある程度恋愛テクニックが身についたら、まだ自分のことをそんなに愛せていなくても、どんどん恋愛にトライするべきです。試行回数が増えると、たまに成功することがあります。成功体験が生まれれば、自分のことをもう少し愛せるようになっていくのです。 
恋愛トレーニングは、自分を愛するトレーニングでもあります。完璧を目指さなくてもいい。少しずつ自分を愛しながら、良い恋愛関係を築いていきましょう。
(236~237ページ)
⇒☆「完璧でなくてもいい」という言葉ですごく気持ちが楽になりますね♪

2018年3月14日水曜日

【発達凸凹 Book#28】 『ぼくには数字が風景に見える』



発達凸凹に関する本は本当にたくさんあって、この本がベスト!ということは言えません。でも、もしかすると一冊の本が、生きづらさを感じている人の扉を開いてくれるかもしれない…という思いを込めて、本をご紹介します。

本の紹介


『ぼくには数字が風景に見える』
ダニエル・タミット=著・古谷美登里=訳/講談社文庫

著者のダニエル・タミット氏は語学や計算に超人的な能力を持つサヴァン症候群であり、アスペルガー症候群の方です。2004年に円周率を2万2514桁を暗証し、ヨーロッパ記録を樹立します(のちにミスが判明)。

彼が出演するドキュメンタリー「ブレインマン」は日本でもNHK教育テレビで放送され、目にした方も多いのではないでしょうか?

本書は、そんな彼が自分の誕生から現在(出版当時の2006年)までを、その記憶力を生かしてきわめた克明に綴った回想録になります。

2007年1月にアメリカで出版されるとすぐに、「ニューヨーク・タイムズ」のベストセラーリストの2位(ノンフィクション部門)になり、アマゾンUSAでは1位にもなったそうです。

書評


まず、自らの生い立ちや考えを、虚飾を一切排除して率直に迫っている著者の姿に感動を覚えました。その率直さと、「自分を知り積極的に生きよう」とするひたむきさが、世界中の多くの人に共感を与えたのではないでしょうか?

特に、映画「レインマン」のモデルとなったキム・ピークに会う場面では涙無くして語れませんね(T_T)

また、サヴァン症候群の人たちの内面や共感覚を克明に綴っているという点も特筆すべきだと思います。4は内気で物静か、89は舞う雪のよう。数字に色や感情、動きを感じる共感覚について記述がこの作品に不思議な色合いをもたらしているなと感じました♪


引用とコメント


以下は書籍からの引用とコメントになります。
「⇒☆」から始まる箇所が引用に対するコメント文です。

確かにこの能力(膨大な数字を操ったり計算したりする能力;註)はサヴァン症候群の人によくみられるものだ(「lightning calculators電光石火計算する人たち」と呼ばれる
(14ページ)
⇒☆このlightningから始まる異名(?)がカッコイイです!

(母乳で育てることは;註)自閉症スペクトラムの子どもたちの感情発達にとって有益だとも考えられている。母乳で育てられた自閉症の子どもは、粉ミルクで育てられた子どもより周囲の反応がよく、社会的な順応性が高くなり、感情が豊かになるという報告もある。
(31ページ)
⇒☆さまざまな事情で粉ミルクでしか育てられない場合でも、粉ミルクの成分が母乳と何ら変わらなくなるように、今後の粉ミルクの開発に期待したいですね♪

英国自閉症協会の2001年の調査によれば、高機能自閉症、あるいはアスペルガー症候群の人でフルタイムの仕事に就いているのはたった12%。一方、2003年のイギリス統計局の調査では、ほかの障害者では49%が、そして健常者の81%が正規に雇用されている。 
(中略)自閉症協会の求職情報誌は、公平に扱ってもらうためには面接を受けるより試用期間をもうけて働かせてもらうことを勧めている。
(203ページ)
⇒☆面接を受けるよりも試用期間を設けて働くことが、公平かつ衡平な採用方法として普及すれば素敵♪

キム(キム・ピーク;註)が伝えたいことはこういうことなんです。『人と違っていることで障害者にされる必要はない。だれのからだも違っているのだから』
(275ページ)
⇒☆さらに言えば、「だれの脳も違っているのだから」という言葉、つまり一人ひとりの脳のタイプが違う「ブレインスタイル・ダイバーシティ」という概念が今後普及していけばいいなと思いました♪

世界中の多くの人々に感動と共感を与えたのは、自分を知り積極的に生きる道を選んだ彼の勇気とひたむきさだったのだと思います。映画『レインマン』のモデルとなったキムピークに会う場面では思わず胸が熱くなりました。
(311ページ)
⇒☆自分を知り、積極的に生きようという道を選んでいく発達凸凹の方のために、これからも何ができるかを考えて追求していきたいですね!

そのいっぽうで読者は、アスペルガー症候群という難しい障害を抱えながらも、一歩一歩自立の道を歩んでいくタメット少年の成長ぶりに、大きく心を動かされるだろう。 
彼を支えた家族の姿も、また感動的である。とくに、障害についての知識を持たずに、育てにくい子どもを立派に成人させた両親の存在は、いまの時代の多くの親たちに希望を与えるに違いない。
(324ページ)
⇒☆凸凹フューチャーセンターも、一歩一歩「ひたむきに」そして、「愉しく」歩んでいく姿を日々発信していきたいと思います♪

2018年2月25日日曜日

【発達凸凹 Book#27】 『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 大人の発達障害 日常生活編』



発達凸凹に関する本は本当にたくさんあって、この本がベスト!ということは言えません。でも、もしかすると一冊の本が、生きづらさを感じている人の扉を開いてくれるかもしれない…という思いを込めて、本をご紹介します。

本の紹介


『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 大人の発達障害 日常生活編』
宮尾益知=監修/河出書房新社


河出書房新社の「親子で理解する特性シリーズ」


本書は、河出書房新社が発行している「親子で理解する特性シリーズ」の内の1冊です。
以前にこの発達凸凹Bookのコーナーでも、本シリーズの一つ、『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 職場の発達障害』を取り上げました。



今回ご紹介する本は、ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LDの特性を理解して、日常生活の「大変さ」を減らす対応策と適切なサポートの方法について書かれたものになります。

本書の構成


第1章では、発達障害の特性は基本的に変わらないことや女性の発達障害は気づかれにくいこと、トラブルの原因は"大人の常識"が通じないことなどが書かれています。
また、空気が読めない、約束が守れないといった日常生活でのさまざまな場面における特性の強弱をチェックする「日常生活チェック」という項目が10個ほど登場します。

日常生活で起きやすい代表的なトラブル


第2章では、日常生活で起きやすい代表的なトラブルと対応策(ASD編)。ASDの人が起こしやすいトラブルである、「深い人間関係が気づきにくい」点を取り上げ、サポートのポイントについて解説しています。

第3章は、日常生活で起きやすい代表的なトラブルと対応策(ADHD編)。
ADHDの人が起こしやすい代表的なトラブルである、「約束が守れない」「片付けが苦手」「毎日の家事が苦手」「金銭の管理が苦手」の4項目について、具体的なサポートの方法について解説しています。

交友・恋愛編


第4章は、交友・恋愛編。ASD、ADHDの人が友人との間でトラブルになる理由を説明した上で、会話のスキルを上げるポイントをASD、ADHDに分けて解説しています。

また、恋愛のトラブルについては、特にASDの人が直面することが多い「異性との付き合いが長続きしない」・「食事のマナーが守れない」の2点において注意すべきことも取り上げています。

子育て・夫婦関係編


第5章は、子育て・夫婦関係編。子育てにはマニュアル特性のためにも正解もなく、日々成長し変化していく子どもへの対応に戸惑ったり悩んだりしてしまいます。

また、特性のために夫が妻の状況を理解できなかったり、常に自分の好きなことを優先して子育てや家事を手伝わないために、トラブルになってしまう場合があります。

そんな子育ての悩みや子育てを手伝ってもらうためのサポートの方法については、ポイントを絞って解説しています。

夫婦関係編では、①夫がASDの場合、②妻がASDの場合、③夫がADHDの場合、④妻がADHDの場合の4パターンに分け、各々のパターンでよくあるトラブルとそのトラブルを回避するコツを紹介しています。

二次障害と薬物治療


第6章は、二次障害と薬物治療についての章です。二次障害については、大人の発達障害の人がかかりやすい主な二次障害と二次障害に効果のある主な薬が紹介されています。

また、大人のADHDに効果がある薬物治療(特にコンサータとストラテラ)やカウンセリング、環境調整についても書かれています。

専門医からのアドバイス


第7章は、専門医からのアドバイス。監修者の宮尾氏が、多数の発達障害の方を診察してきた専門医として、大人の発達障害の方がもっと楽に生活できて、支援する方や企業の担当者にとっても参考になるためのアドバイスを綴っています。

書評


見開き2ページで1トピック+大きなイラストで読みやすい♪


見開き2ページにトピックを1つに絞って解説するという書き方なので、1ページ目から読む必要がなく、気になった箇所から読み進めていくことができます。読書にハードルの高さを感じている人にとってとっつきやすい書物になっているなと感じました。

大きなイラストがふんだんに使われているので、文字が苦手という方にも読みやすいと思いました。

ASDの人には予習を、ADHDの人には復習を


また、日常生活を送る上で生じるトラブルやその背景、サポートのポイントについて、ASDとADHDに分けて解説しているのも印象的でした。

中でも、「ASDの人は物事を概念化することが苦手なので、一見同じようなケースに思えることも、一つひとつ予習して覚えていく必要がある。ADHDの人は、考える前に行動してしまうという特性があるので、失敗してもそれを責めずに、後から復習させることで、次からはうまくできるようになる」という指摘は非常に興味深い指摘だなと感じました。

この「ASDの人には予習を、ADHDの人には復習を」という視点を持つのもサポートする上での重要な点だなと思いました。

発達障害の人の中に閉塞社会にイノベーションを起こす人材が!


監修者の宮尾氏が第7章で、「日本では多くの企業がイノベーションやブレイクスルーを起こせる人材がいないと悩んでいるが、発達障害の方の中からそういう人を探し出すことが一つの方法になるのではないか」と指摘したのも強烈なインパクトを受けました。我がOne day cafe.kyotoも、閉塞社会にイノベーションを起こす場の一つになればいいなと感じました♪

引用とコメント


以下は書籍からの引用とコメントになります。
「⇒☆」から始まる箇所が引用に対するコメント文です。

ADHDの女性は、子供の時から男性に比べて「多動性」「衝動性」の特性が目立ちません。しかし、「多動性」が「おしゃべり」に現れたり、「衝動性」が「移り気」や「つい、うっかり~」に現れる場合が多いようです。 
こうした特性は思春期前後から現れてきます。その結果、女性同士の会話で友人の秘密をつい「暴露」してしまうなどの不注意な発言や人の話に割り込んだりして周囲とトラブルになる場合があります。
(49ページ)
⇒☆多動性や衝動性の特性が目立たないからと言って、ADHDの女性が生きづらさを抱えていないわけではなく、むしろ女性特有のコミュニケーションの中で生きづらさを抱えることがあるということですね。

ASDの方には予習が必要であれば、ADHDの方には復習が重要です。失敗してもそれを責めずに、後から復習させることで、次からはうまくできるようになるのです。
(61ページ)
⇒☆「ASDの人には予習、ADHDの人には復習」。各々の特性をもつ人をサポートする上でのポイントが端的かつ分かりやすく表現されてますね♪

顔を見ながら相手の感情を読み取ることが苦手なので、1対1で向き合って話すよりも、横に並んで、一緒に対象となるものを見ながら話をするというのがよいでしょう。 例えば、スケジュール表や図などを見ながら説明すると、緊張せずに理解してもらいやすくなります。 
言い方のコツとしては、アドバイスをするというよりは、「私だったら、こうするな」とボソッとつぶやくような言い方が良いでしょう。例えて言うなら、クイズ番組を一緒に見ながら、ヒントとなるようなことをボソッとつぶやくといった感じです。 
「いいことを聞いた。もうけた、得した」と思えば、彼らは不思議なほど素直に受け入れ実践します。自分の得にならないことを強制されることには、非常に苦痛を感じますが、社会的な評価や経済的なメリットがあるとわかれば行動するのです。「〇〇すればあなたが得するよ」といったような言い方も効果的です。
(61ページ)
⇒☆であるならば、「私だったら、こうやって愉しむな」とか、「〇〇すればあなたも愉しむことができるよ」という言い方をするのもいいのかもしれませんね♪

ASDの人と結婚する場合は、最初に家庭内の役割分担をしっかり話し合って決めておくことがとても大事になります。ASDの人は、家事も自分の仕事と認識すれば、きちんとこなす場合が多く、決められた家事についてはしっかり手伝ってくれるはずです。
(83ページ)
⇒☆この家庭内の役割分担も、子どもが生まれるなどのライフステージが変化する度にしっかり話し合って決めておくことも大切ですね!

人間関係で大きなストレスを抱えている人は、ペットを飼うことでリラックスできる人もいます。人間が相手だと緊張する人も相手がペットだとリラックスして話しかけられるようです。生き物が飼えない場合は、ぬいぐるみやロボットでも構いません。
(100ページ)
⇒☆One day cafe.kyotoでも以前、動物療法に関する記事を「発達凸凹速報」として、facebookページにてご紹介しました。なるほど、ぬいぐるみやロボットでもいいのですね。

脳神経科医、オリヴァー・サックス博士の著書『火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者』には、自らを「火星の人類学者のようだ」という自閉症の動物学者の話が出てきます。 
彼女は人の気持ちや表情が読めず、複雑な感情やだましあいが理解できないため、"厖大な経験のライブラリー"を作り上げ、それを参照することで普通の人の行動様式を分析し、解読しながら生活しているといいます。 
「自分は火星人で、地球人の中に紛れ込んで彼らのことを勉強している」くらいの気持ちで人と接するというのも、一つのヒントになるかもしれません。
(107ページ)
⇒☆普通の人の行動様式を分析し、解読しながら生活するのは中々1人ではできないことですので、当事者会に参加するなどして、「普通の人はこういった場面ではこう考えるのでは?」という意見を出し合いながら、複数人で普通の人の行動様式を分析するのもいいと思います。

今、日本では、多くの企業がイノベーションやブレイクスルーを起こせる人材がいないと悩んでいます。私は発達障害の方の中からそういう人を探し出すことが、一つの方法になるのではないかと思っています。一部の企業では、既にそうした取り組みも始まっているようです。
(111ページ)
⇒☆発達凸凹さんのポテンシャルを感じさせる、大変勇気づけられる一文ですね。イノベーションを起こせる人材を発達凸凹さんの中からどう見出すかが今後の日本社会に問われていると思います。

2017年11月23日木曜日

【発達凸凹 Book#22】 『会社の中の発達障害』



発達凸凹に関する本は本当にたくさんあって、この本がベスト!ということは言えません。でも、もしかすると一冊の本が、生きづらさを感じている人の扉を開いてくれるかもしれない…という思いを込めて、本をご紹介します。

本の紹介


『会社の中の発達障害』
星野仁彦=著/集英社

本書は、近年書籍やマスコミでも取り上げられることが多い大人の発達障害、特に遅刻や〆切を守れない、デスク周りが乱雑などといった、会社における発達障害についてまとめた一冊になります。

第1章では、大人の発達障害について近年注目されるようになった要因を3つ挙げています。すなわち、①軽度まで含めると出現率が高いため(10%以上)、②ストレス耐性が低く、思春期以降に二次障害や合併症を発症しやすいため、③高学歴でも、社会適応が困難で就労してから問題が生じやすいため、という3つが要因として挙げられています。

第2章では、大人の発達障害の種類(ADHD・アスペルガー症候群)とそれらの特性について解説しています。ADHDでは、①不注意、②多動性、③衝動性の3つの特性が、アスペルガー症候群では、①社会性・対人関係、②コミュニケーション、③想像力、④感覚過敏・鈍感、⑤協調運動の不得手の⑤つの特性を紹介してます。

第3章では、発達障害が疑われる人たちの職場での振る舞いや仕事ぶりなどの具体例を挙げて、周囲がどのように対応すればよいかを提案しています。

第4章では、発達障害を抱える著者自身の幼少期からこれまでを記しています。祖母に向かって「お前、早く帰れ!」と言い放った三歳児のころや、高校野球の勝利予想にハマった中学生時代、下宿にハエの大群がわいた医学部学生時代などのエピソードが赤裸々に述べられています。

第5章では、発達障害の人が思春期・青年期以降に併発しやすい病気を紹介するとともに、発達障害の治療法として、心理教育と環境調整法、認知行動療法や自助グループへの参加、薬物療法について解説しています。

書評

「星野流根掘り葉掘り」が紐解く多様な「会社の中の発達障害」


職場での振る舞いや仕事ぶりなどの具体例が本当に豊富(その数なんと25個!)に挙げられており、一口に「大人の発達障害」と言っても一人ひとりの特性が多様であり、それ故に直面するトラブルや困難も多様であることを改めて実感しました。

また、一つひとつ具体例について、当事者本人の話だけにとどまらず、幼少期からのエピソードや仕事ぶりに対する周囲の評価などについても述べてあります。

これは、「とことん話を聞いて、これでもかとしつこく尋ねる」問診中心の診察を心がけている著者だからこそ書ける部分かなと感じました。ちなみに、著者の入念な問診は、「星野流根掘り葉掘り」と言われるほどだそうです(笑)

興味を持てる分野を持つことの重要性


そんな著者自身も不注意優性型のADHDで、ひとり暮らしや試験勉強などで学生時代には大いに苦労しています。そんなときに威力を発揮したのが、興味を感じる対象には過剰ともいえる集中力が向けられ、もくもくと努力することができる発達障害の特性でした。

著者は、中学生時代に高校野球の勝利予想に夢中になり、全国の都道府県の予選試合を観戦し、データを分析し、優勝高校を予想する作業に没頭します。

そのときの「徹底的に集中して分析する」という経験が、医師国家試験の過去10年分を徹底的にリサーチしてヤマを張ることに大いに役立ったようです。

高校野球の勝利予想という、今すぐに役立つとは思えないことでも、将来にどういう影響があるかは誰にもわからないものです。損得や合理性にとらわれず、興味の持てる分野を見つけることは発達障害の人には必要だと感じました。

引用とコメント


以下は書籍からの引用とコメントになります。
「⇒☆」から始まる箇所が引用に対するコメント文です。

ADHDは、行動面だけに問題があるのではなく、社会性、学習面、認知機能、運動機能などのバランスが不具合である状態をいいます。そうような症状が、社会生活に適応することのハンディになりやすいということなのです。私を含め学者や研究者の中では、発達障害のことを、「発達アンバランス症候群」と呼ぶべきだという声が増えてきました。
(28ページ)
⇒☆確かに、「障害」という言葉のインパクトやネガティブなイメージからも、「発達アンバランス症候群」や「発達凸凹」と呼ぶ方がいいと感じることがありますね。同時に、アンバランスや凸凹を持っていても生きづらさを感じることなく、アンバランスさや凸凹具合を愉しみながら生きていける社会の仕組みを作り出していくことも大切ですね♪

(著者の;註)母も間違いなく発達障害(ADHD)だと考えられます。父は多動・衝動性優性型、母は不注意優性型といわれるタイプで、このふたつのタイプはなぜか妙な親和性があり、引き合うのです。いじめっ子といじめられっ子、DV(夫婦や内縁関係、恋人などの近親者間に起こる暴力)加害者と被害者という関係になる傾向があります。
(138ページ)
⇒☆元来、人懐っこいというADHDの基本的な特性の上に、多動・衝動性優性と不注意優性というそれぞれの特性が作用して、いじめやDVの関係ができあがる傾向があるのかもしれませんね。

今役に立つとは思えないことでも、将来にどういう影響があるかは誰にもわからないものですので、損得や合理性にとらわれず、興味を持てる分野を見つけることを、発達障害の人にはおすすめします。
(144ページ)
⇒☆先日のOne day cafe.kyotoで、ゲストのウヌマさんがおっしゃっていた「計画的偶発性」と通じる部分かもしれませんね♪


「気づくこと、受け入れること、そして情熱を注いで生きること」
 本人や家族、職場を含む周囲の人間が、現実に気づき自分を冷静に見つめなおすことができれば、治療の効果も上がり、改善の方向に向かう可能性は十分にあります。
(161ページ)
⇒☆そしてゆくゆくは、「改善自体を愉しむこと」ができるようになれば更に素敵ですね♪確か、先述したウヌマさんも、自称「改善オタク」でしたね(^_^;)

全国的に展開している大人の発達障害の自助グループとしては次のものなどがあります。
 ①えじそんくらぶ ADHDの人とその家族などを応援
 ②アスペ・エルデの会 発達障害者とその家族や関係者を支援
 ③大人のADD&ADHDの会 ADHDの人の実態を把握し支援
(183ページ)
⇒☆上記3つに加え、小規模ながら地域で活動している自助グループとすぐに繋がれる仕組みや支援が必要ですね!特に地方では切実な課題でしょう。

2017年11月2日木曜日

【発達凸凹 Book#20】 『発達障害者の就労支援ハンドブック』



発達凸凹に関する本は本当にたくさんあって、この本がベスト!ということは言えません。でも、もしかすると一冊の本が、生きづらさを感じている人の扉を開いてくれるかもしれない…という思いを込めて、本をご紹介します。

本の紹介


『発達障害者の就労支援ハンドブック』
ゲイル・ホーキンズ=著・森由美子=訳/クリエイツかもがわ

本書では、発達障害の就労支援にあたって重要と思われる3つのステージを順序立てて説明しています。3つのステージとは、①「本人のことを知る」、②「架け橋を作る」、③「適切な仕事を見つける」です。

本人のことを知る


①「本人のことを知る」は、本書のPart1で扱われています。発達障害を知らない人にもわかりやすくまとめられているとともに、客観視が難しい発達障害の人たちにいかに客観的に自分のことを理解してもらうかという、気付きの与え方についても触れています。

架け橋を作る


②「架け橋を作る」ことについて説明したPart2は4つの項目に分かれています。
まず、1つ目で発達障害の人たちを指導するための4つの柱、「効果的なコミュニケーション」・「明確な期待」・「明確な成り行き」・「一貫性」の重要性とそれらを応用する具体的な方法について説明しています。

2つ目の項目は、就労の道具箱。成功に導くための手段トップ10が挙げられています。

3つ目の項目は、大きなイメージ評価。社会的なスキルや個人の特性などの7つのカテゴリーにおいて、発達障害の人のもつ、競合的な雇用スケールの4段階で評価する取り組みが紹介されています。

4つ目の項目は、具体的な方法。3つ目の項目で集めた情報を元に、就労に向けて取り組むべき課題に優先順位をつけ、それらに実際に対処していくための具体的な方法を紹介しています。

適切な仕事を見つける


③「適切な仕事を見つける」ことについては、Part3で書かれています。実際に就労できたとしても、本人の興味や関心、特性にマッチした仕事に就くことができなければ、長続きしないでしょう。

本書では、発達障害の人が適切な仕事を見つけるための3段階の手順(「キャリア方向の定則」)として、以下の3つの手順を紹介しています。
 第1段階:特別な興味、固執しているもの、心惹かれているものを調査する
 第2段階:心惹かれるものを仕事に生かす
 第3段階:仕事の現実性のチェックリストを作る

書評


原著は、ゲイル・ホーキンズ氏がアスペルガー症候群の人たちの雇用を支援するために書かれました。(「アスペルガー症候群」という言葉ではなく、「発達障害」という言葉に置き換わっている経緯については、後述の「引用とコメント」の部分を参照)

ですので、就労の問題で悩んでいるアスペルガー症候群の人たちには、正にドンピシャで役立つ情報が満載です。

また、「就労支援」という言葉もタイトルに入っていますが、本書では、支援者が読むことを前提とした難解な専門用語は出てこず、実例や図表が多く使用されています。

なので、支援者のみならず、就労の問題で悩んでいる、アスペルガー症候群以外の発達障害の人や、発達障害とは全く無縁でも、仕事を見つけたり仕事を維持したりするのに悪戦苦闘している人たちにも有益な本だと感じました。

引用とコメント


以下は書籍からの引用とコメントになります。
「⇒☆」から始まる箇所が引用に対するコメント文です。

(DSM;註)第4版では、広汎性発達障害という大きな傘の中に「自閉症」「アスペルガー症候群」「広汎性発達障害ー他の亜型」などの小分類があったのに対し、第5版では、「広汎性発達障害」「アスペルガー症候群」という言葉を用いず、「自閉症スペクトラム障害」という大きなカテゴリー、つまり連続体の中にこれまでの「自閉症」や「アスペルガー症候群」を位置づけ、二つの領域「社会性・コミュニケーション能力における欠如」と「固執した興味や常同行動」における度合いを3段階に分けた基準に沿って査定し、障害がある本人のニーズをより明確にしようとしている。
(8ページ)
⇒☆第5版に移行して数年が経ちますが、未だに第Ⅳ版から変更された点への整理がされないまま、用語がそのまま使われていることが多い気がしますね。

「DSM-Ⅳ」から「DSM-5」へと、表記がローマ数字から算用数字に変わるのを注目すべき点で、5.1、5.2といったように、今までより頻繁に改訂を行うことが見込まれている。
(8ページ)
⇒☆頻繁に改訂が行われることで現場の混乱があることも予想されますが、一方で、最新の科学的知見が即座に診断基準に反映されるのは喜ばしいことだと思います。

原著の「アスペルガー症候群」という言葉も、本書では「発達障害」に置き換えさせていただいた。上記のDSM-ⅣからDSM-5への改正点を考慮すると矛盾しているし、現在で言うところの「発達障害」にはレット症候群や小児期崩壊性障害が含まれることも理解している。ただ実際に、日本ではアスペルガー症候群を「発達障害」を言い表すことが多く、実際に一般の人たちの間では「自閉症スペクトラム障害」「アスペルガー症候群」よりも「発達障害」という言葉の方が馴染んでいるのが事実である。この場合の「発達障害」とは、児童精神科医の佐々木正美先生が使われている「発達障害スペクトラム」という言葉の意味、つまり発達障害全体を連続体ととらえる考え方に似ている。DSM-5が出ても、その新しい概念が一般の人たちに浸透するには、しばらく時間がかかると思われる。このような理由からも、本書はあえて「発達障害」という言葉を使い、「アスペルガー症候群の人たち」と「それらしき人たち」、どちらにも属さないが「その他の発達障害で雇用問題に悩んでいる人たちや興味をもつ人たち」、そしてその支援者たちに読んでいただきたいと願っている。
(9ページ)
⇒☆なるほど。そういった理由で「アスペルガー症候群」という言葉を「発達障害」という言葉に置き換えているのですね。
でも実際に、ADHDの人で雇用の問題で悩んでいる人が、ぱっとタイトルを見ただけでは本書を手に取るも、内容がアスペルガー症候群を対象にしたものであるために違和感を感じてしまうといった、ある種の誤解というか混乱を招く可能性があると思いますが。

「多様すぎて一人ひとりに対応が必要」とほとんどの専門家があきらめていた発達障害について、具体例をあげながら体系だってまとめている本書には勇気をもらいました。
(10ページ)
⇒☆確かに、発達障害者向けのリワークプログラムでも、この多様性への個別対応が必要であることが診療報酬に反映されていないという事情がありました。(発達障害者向けのリワークプログラムについては、こちらの記事を参照)

発達障害の人たちは、極端な世界に生きている。彼らは物事を黒か白という観点で見るため、グレーの領域に苦労する。尺度は、両極端のものを特定し、そのうえで中間部分を特定できる。尺度に示されている数字は、グレーの部分をより具体的にすることができ、その結果、特定もしやすくなる。
(80ページ)
⇒☆なるほど。「0か100」ではなくて、尺度を導入して、中間部分を数値化して具体的に指示することを繰り返していけばいいのですね。

言語、記述、実践による指示に対する理解力
学び方には3つの形がある。それは、聴覚、視覚、感覚を使った方法である。
①聴覚…聞く事(言葉による指示)を通して学ぶ。
聴覚を通して学ぶタイプの人は、聞くことによって一番よく学べる。そういう人たちは、言葉による指示、話し合い、物事を説き伏せて説明すること、人が言うことに耳を傾けるのを好む。説明を声に出して読んだり、録音機器を使ったりすると、しばしば効果がある。
②視覚…見ること(記述による指示)を通して学ぶ。
視覚を通して学ぶタイプの人は、映像のなかで物事を考える傾向があり、図形、さし絵入りの本、ビデオ、チェックリストなどを含む視覚的なものを使うと最も効果的に学ぶことができる。
③感覚…接触、動き、行動(実践による指示)を通して学ぶ。
このタイプの人たちは、まわりにあるものを積極的に取り入れながら、実践的な方法を使うと、最もよく学ぶことができる。彼らにとって、長い時間じっと座っているのは大変かもしれないし、活動や探究の必要があることで気が散ってしまうこともあるのかもしれない。
どのように学ぶかということは、指示をどのように理解するかに影響する。本人の情報処理の仕方がわかれば、あなたが仕事や課題を説明する最良の方法を決める上で役立つだろう。
(117ページ)
⇒☆上記の情報処理の3つのタイプを頭に入れて、その人はどのタイプが一番理解しやすいのかというのを判断した上で、その人の処理方法にあった伝達手段を選ぶようにしていけば、情報伝達がスムーズになりますね♪

私の父は、人生の中で闘うべきときとそうでないときを選びなさいとよく言っていた。つまり、父は、何が私にとって一番大切で、何に努力する価値があるのかを自分で決める必要があるということを言いたかったのである。あなたも発達障害の友達も、何に対した闘うべきかを決断するときだ。
(130ページ)
⇒☆まず、闘うべきものを自分で決めないままに闘っている人が多い気がします。
また、支援を受けた方が闘いを優位に進められることが傍から見たら明らかなケースでも、支援サービスへの無理解や支援を求める方法がわからないからなのか、「孤軍奮闘」に陥っている人も多い場合も。
そして、いつのまにか、闘うこと自体が目的になってしまっている人も多いのは実に残念。