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2018年9月18日火曜日

【発達凸凹 Book#35】 『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 女性の発達障害』



発達凸凹に関する本は本当にたくさんあって、この本がベスト!ということは言えません。でも、もしかすると一冊の本が、生きづらさを感じている人の扉を開いてくれるかもしれない…という思いを込めて、本をご紹介します。

本の紹介


『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 女性の発達障害』
宮尾益知=監修/河出書房新社

発達障害の女性は、女性特有のさまざまな"生きづらさ"や"ズレ"を抱えている場合があります。特に思春期以降、友人問題や恋愛、就職などのさまざまな問題に直面した時、上手に対応できずに悩み苦しんでいる場合もあると思います。

本書は、そんな発達障害の女性を理解して家庭や職場での対応策や適切なサポートの方法を解説した一冊です。

書評


本書は、発達凸凹Bookとして過去にも紹介した「親子で理解する特性シリーズ」の1つになります。
以下に過去に紹介した書籍を記します。

発達凸凹Book#15 『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 職場の発達障害』


発達凸凹Book#27 『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 大人の発達障害 日常生活編』

本シリーズは、見開きページ毎にトピックスが完結していることや大きなイラストが多数収録されていることが特徴です。そのため、女性の発達障害について読みやすくて理解しやすい構成となっているのが嬉しいですね♪

また、発達障害の女性特有の"生きづらさ"や"ズレ"に対しての対応策やサポートについて、具体的に書かれているのも重宝しますね♪

引用とコメント


以下は書籍からの引用とコメントになります。
「⇒☆」から始まる箇所が引用に対するコメント文です。

例えば ASD(アスペルガー症候群)には、大きく3つのタイプに分けることができます。 
1●積極奇異型 
知らない人にも平気で話しかけたり、なれなれしく接したりする。 
2●受身型 
自分から積極的に接触を図ろうとしないが、誘われれば付き合うタイプ。女性に多いと言われています。 
3●孤立型 
他人と話したり関わったりすることに苦痛を感じ一人でいることを好む。 
 一般的に子供の時は1のタイプが多く、思春期から大人になるにつれて2や3のタイプに性格が変化していくケースがあります。 
女性の場合は、小学校中学年ぐらいから2や3のタイプに性格が変化していくケースが多いと言われています。 
(10ページ)
(ASDの;註)女性の場合は、思春期前後になると空気が読めず周囲に馴染めなかったり孤立してしまうことがあります。 
(23ページ)
⇒☆女性の場合、思春期の前後に周囲に馴染めなかったり孤立しまうことが、その後の生きづらさにも直結しやすくなるのかも知れませんね。

ADHDは、男性より女性に多い発達障害ともいわれていますが、その理由はまだわかっていません。 
(25ページ)
⇒☆「ADHDは男性よりも女性に多い」という理由がまだわかっていないのは、本当に興味深いです!


いわゆるガールズトークですが、不十分な説明と言葉と非言語コミュニケーションが時と場所を選ばず行われていくということですが。発達障害の女性には、最も苦手なことだと思います。 
私も以前、女性会SSTを企画しましたが、内容を聞いて、会話の移り変わりの激しさに諦めてしまいました。 
(29ページ)
人の話を聞く姿勢、相づちの打ち方、皆に有用な情報など引き出しをいくつか用意しておいて使ってみる努力をしつつ、一人でも良いと思う気持ちを持つようにした方が良いと思います。 
そのような気持ちの持ち主が複数いると、人間関係の悩みを半減するはずです。 
(29ページ)
⇒☆一人でも良いし、「何が何でもみんなと仲良くしなきゃならない」という思い込みから解放されることで、楽になることが多いと思われますね。


大学では、多くの学生が5月頃に第一の危機が訪れます。何もかもうまくいかなくなって、どうしたら良いかわからなくなります。 
まだ本当に相談する人はいませんし、「どれくらい」といった適当という言葉もわかりません。 
そういう時は、思い切って休んでみましょう。引きこもり、どこかに出かける。期間は2週間程度が適切です。罪悪感は持たず、あたり前のようにこの時間を取ることで、その後の大変な状況を免れることはできます。 
(30ページ)
⇒☆期間を限定して罪悪感を持たずに引きこもる「積極的引きこもり」。確かに有効かもですね♪
(アスペルガー症候群の;註)女性の場合は幼児期にほとんど特性を目立たず、10歳前後になってきて、他人との「ズレ」を感じはじめることが多いようです。 
(32ページ)
(アスペルガー症候群の中;註)男の子の場合、「積極奇異型」といって特性が問題行動に現れるケースが多いということもあります。 
それに対して女の子は、自分から行動を起こすより人に指示された通りに行動したり、言われたことを素直に信じてしまう「受動型」が多いという面もあるようです。 
(33ページ)
⇒☆女性のアスペルガー症候群特有の、「ズレ」の出現や「受動型の多さ」のことに対する認知度がもっと上がれて周囲のサポートを受けやすくなると思います。
(孤立してしまうことへの;註)サポートと対応法 アスペルガー症候群の女性に対しては、特性を理解してあげることがサポートの基本です。 
 交友関係 
1.社会性の問題からグループ意識と仲間との関係性を結びにくい面があります。無理に友達と遊ばなくてもいい、ということを説明します 
2.無理に友達はつくらず理解してくれる友だちを一人でも見つけてあげるようにしましょう。 
3.一人でも好きな趣味などあれば、認めてあげることで落ち着いてくる場合があります。 
 会話 
1.「今日はどうする?」→「調べたいものがあるから図書館へ行こう」というように、あいまいな表現ではなく。理由を付け加えて具体的に何をするか話す 
2.冗談や言葉の裏を読めないこともあるので、はっきり理解できる言葉を使う 
3.相手の言うことを聞かず一方的に話す場合は、話をさえぎらず、聞いてあげる姿勢も必要です。 
周囲が理解する 
アスペルガー症候群の女性は、相手が怒っているのか笑っているのか表情が読めない場合もあります。強い口調は、すべて怒っているように理解してしまいます・特性を説明して、周囲に理解してもらうことが重要です。 
(35ページ)
(アスペルガー症候群の女性が;註)自分に合った医療機関を探すポイントは二つあります。一つは発達障害に詳しいこと。そして体調不良を治療してくれるかということです。 
アスペルガー症候群の女性は、男性よりも体調不良になりやすいという特徴があり、この二つを兼ね備えている医療機関を選ぶと安心です。 
(40ページ)
コミュニケーションで失敗して大きなストレスを抱えている人は、ペットを飼うことでリラックスできる人もいます。ペットを相手に話すことを日課にすることでホッとする人は多いようです。 
  • 犬や猫に限らず、金魚や亀など飼いやすいペットを選ぶ 
  • ペットに話すことでコミュニケーション不足が補える 
  • ペット仲間と共通の話題ができ、新たな友達ができることもある 
(43ページ)
ADHDの女性は、特性による行動に強いコンプレックスを感じて、自分の周りの女性や世間が求める理想の女性を目指して必要以上に頑張ってしまう場合があります。 
(中略)大事なことは自分にとって精神的な重荷にならない生き方や暮らし方とは何かを考え、見つけることです。 
完ぺきを目指して失敗を重ねるより「失敗してもいい」「多少いい加減でもいい」と自分を許して楽になりましょう。 
(68ページ)
⇒☆小さな失敗をたくさん経験できる場を作っていくことがますます求められるなと感じました。
(手前味噌ですが、)コミュニケーションといった対人場面での小さな失敗は、One day cafe.kyotoでたくさん経験し、それと同時に小さな失敗を自分も周囲の人も受け止める機会を持ってもらえれば♪

「恥ずかしいこと」とは何かを説明することも必要ですが、社会的なルールとしてこのような行動はしてはいけない、ということを明確に教えてあげる必要があります。 
間違いを指摘したり、ただ恥ずかしいことを伝えたりではなく、具体的にどう行動すればよいのかを示すことがサポートにつながります。 
(74ページ)
⇒☆アスペルガー症候群に対してはルールとして教える、もしくはそれを文章化して伝える方がより伝わる気がします。

2018年4月21日土曜日

【発達凸凹 Book#29】 『発達障害は最強の武器である』



発達凸凹に関する本は本当にたくさんあって、この本がベスト!ということは言えません。でも、もしかすると一冊の本が、生きづらさを感じている人の扉を開いてくれるかもしれない…という思いを込めて、本をご紹介します。

本の紹介


『発達障害は最強の武器である』
成毛眞=著/SB新書

著書の成毛眞氏は、おすすめ本を紹介する書評サイト「HONZ」の代表を務めています。自己診断によるADHDの傾向が強い著者。自身の人生を振り返りつつ、「ADHDはもし矯正しなくて済むものなら、矯正しないほうが幸せに生きられる」というメッセージが込められています。

精神科医の香山リカ氏、和田秀樹氏との対談も掲載。第1章の章末では、「それはADHDの特徴ですね」というタイトルで香山リカ氏が登場。第3章の章末では、「僕も子どもの頃、教室をふらついていた」というタイトルで和田秀樹氏が登場します。

本書の構成をご紹介


本書の構成は以下のようになっています。
序章 これからの時代、周りの人と違ってなんぼ
第1章 飽きっぽい自分とのつき合い方
第2章 IT業界は発達障害者だらけ?
第3章 発達障害の子どもの可能性を考える
第4章 空気が読めなくたっていいじゃない
第5章 社会人としてADHDの特性を発揮

書評


発達障害者こそこれからの時代に求められる人材


まず、本書のタイトルが希望にあふれるものだったので、思わず衝動買い^^;
著者は、「これからの時代、周囲の人たちと違ってなんぼ。一風変わったものの見方や感性をもった人のほうが活躍する時代」と指摘しています。

その上で、「『進取の精神に富み、過去の失敗に囚われず、思いついたことは何でもやってみる』という特性を持つ人が多い発達障害者こそ、これからの時代に求められる人材であるという主張には、「うん、うん」と思わず頷いてしまいました~♪

マイクロソフト社の幹部会で目撃した光景


第2章で述べられている、著者がマイクロソフト本社の幹部会で目撃したビル・ゲイツのエピソード(奇行?)は抱腹絶倒もの♪

「当時のアメリカ本社の幹部会を見ていると、このまま全員病院行きになるんじゃないかと怖くなることがあった」という著者の述懐が、そのエピソードの強烈さを物語っています。

第3章では、"ADHD風味"かもしれない自身の娘さんへの関わり方について述べています。「『これは自分の興味のあることではない』という答えが出たらすぐにやめさせる」という方針が、ADHDの特性を持つ子どもにはとても有効だなと感じました。

衝動性・過集中の特性をフルに発揮した社会時代


第5章では、著者が衝動性や過集中といったADHDの特性をフルに発揮した社会人時代のエピソードが興味深く、また胸をすく内容です。

自身が勤めていたのが日産系列だったにもかかわらず、トヨタ系列のアイシン精機に三菱自動車のミラージュに乗って売り込みをかけにいったのは、衝動性の極み!でも、その衝動性と行動力が、「面白い」と営業先の担当者に評価され、無事商談成立。

また、著者は、誰からも頼まれていないし、営業の仕事に役立つわけでもないのに、無段階変速機に関する特許を徹底的に集めてコピーし、ファイリングすることに熱中していきます。

後日、日産自動車からの「無段階変速機を造れるか」という突然の打診がされた際に、そのファイルがそのまま日産に送られ、無段階変速機部品の受注に成功し、会社の危機を救ったのでした。

引用とコメント


以下は書籍からの引用とコメントになります。
「⇒☆」から始まる箇所が引用に対するコメント文です。

私はこれからの時代、周囲の人たちと違ってなんぼだと思っている。すべての能力が平均的でマスプロダクションにしか適用できない人に比べて、一風変わったものの見方や感性をもった人の方が活躍する時代だと思う。
(19ページ)

⇒☆一風変わったものの見方や感性を面白いと思い、それらを尊重できる社会になれば素敵ですね♪凸凹フューチャーセンターもOne day cafe.kyotoや「話の見える化」といったイベントを通じて、そのような社会の実現にチャレンジしていきたいと思います!

誤解を恐れずに言おう。私が伝えたいメッセージは、ごくシンプルだ。「ADHDはもし矯正しなくて済むものなら、矯正しないほうが幸せに生きられる」
(20ページ)

⇒☆矯正しようとしてより過酷な生き方を選んでしまって、途中で燃え尽きたり、過剰適応してしまう人も多いと思います。障害があるのは社会システムや制度の方であり、多様なステークホルダーとゆるく連携しながら、それらを変えていく必要性を多くの人に知ってもらいたいと思いました。

税関では当然、「他の荷物を取ってこい」みたいなことを言われる。紙袋ひとつで日本からやってくる者などいないからだろう。「この紙袋だけだ」と答えると、かえって怪しく思われ、問い詰められる。  
だが、勤め先を聞かれ、マイクロソフトだと言うと、「ああ…」と妙に納得される。「マイクロソフトじゃしょうがない。こういう人が多いからね」 社名を口にした途端、無罪放免となるのだ。  
後に詳しく語ることになるが、マイクロソフト、いやIT業界には発達障害を抱える人の割合が高いと私は感じている。 シアトルの空港職員も、経験的にマイクロソフト関係者の奇妙な言動に慣れているのだろう。とにかく社名を出せば無罪放免されるのが、その証拠だ。
(32ページ)

⇒☆シアトル空港職員のように、発達障害の人の、一見奇妙と思える行動への理解というか、寛容さをもっと多くの人がもつようになれば素敵ですね♪

そういう(時間感覚を管理できない;註)連中と飲み会の待ち合わせをするときは、あえて意表をつく場所を設定するのがコツだ。 
赤坂や六本木などの有名な歓楽街ではなく、北区の尾久など下町の店で待ち合わせると、案外みんなやってくる。普段は足を向けることのない非日常的な場所であるほど、記憶に引っかかりやすいのかもしれない。
(35ページ)

⇒☆なるほど~。もしかしたら、時間間隔は管理できないけど地図を読むのが苦手ではない人向けかもです。
意表をついたのはいいが、地理的に分かりにくい場所を指定した場合、認知機能の凸凹故に地図が読めない人は道に迷って、結果的に遅刻することが予想されますが^^;

神経生物学者スーザン・バリーは、両眼立体視の能力が低い場合、二次元の視覚情報でものが重なり合って見えるため、近くに散らばっているものが気になって仕方がなくなる傾向があると著書で述べている。 
それが原因かわからないが、私はものの角が揃っているかどうかが非常に気になる。目の前で話している人のノートや本がテーブルの直線に対して斜めに置かれていたりすると、気になって仕方がない。
(36ページ)

⇒☆気になって仕方がないから、目の前で話している人の話の内容が頭に入ってこないと。正に、「発達凸凹あるある」ですね♪

香山(リカ;註):私が診察室で一番苦労されているなと思うのは主婦の方。片づけとか子育てとか、発達障害の人にとって一番苦手とされることを要求されていますから。
(63ページ)

⇒☆発達障害を持つ主婦の方が苦手としていることを代替するツールやサービスへの需要は大きいと思われますし、ある意味でビジネスチャンスですね♪

香山:矯正して社会に適応するのと、矯正しないままで生きていくのではどちらがいいんでしょうか。
成毛:僕は矯正しなくていいんだったら、そのほうが幸せだと思います。
香山:あるいは、矯正しようと思えば、脳は可塑性があるから自然に矯正できるということですね。
(69ページ)

⇒☆努力とか根性で矯正しようとするのではなく、矯正する過程を愉しむ。もしくは小さな成果を感じられるような過程を踏んでいけば、脳の可塑性に委ねて、より生きやすくなるのではと思いました♪

香山:自分を分かってくれる場所を探すということを、モチベーションをもってやってほしいと思います。
(74ページ)

⇒☆その自分をわかってくれる場所の候補として、当事者会が挙がれば嬉しいし、最終的には自分を活かす場所を作る、そしてその過程を愉しめる人がどんどん増えていってほしいと思います♪

(マイクロソフト本社の;註)幹部はビル(・ゲイツ;註)が座る側に並び、会議にはじめて参加する社員は、上座の奥の席に座らされる。だから、周囲の幹部は新参者の社員に必ずこうアドバイスをする。 
「ビルを見ちゃだめだぞ。見続けていると船酔いするからな」5分、10分なら我慢もできる。しかし、1時間ずっと動き続ける人間を見ていると、三半規管が狂って"船酔い"のような状態になってしまう。
(90ページ)

⇒☆ビル・ゲイツの多動性を物語る強烈なエピソード!

「鈍」。これは、基本的にものごとを覚えていないということ。怒ったことも、うまくいったことも、総じて覚えていないというのは、案外重要なことだ。
(98ページ)

⇒☆確かにいい意味で「忘れる」ことは、精神衛生的にもいいのかもしれませんね。

最後の「根」。これは根性という意味ではなく、単に「ハマる」ということ。一度集中したら、その行動を止めることができない状態、つまり「過集中」ということだ。 
(中略)「好きになる」というのは、「ハマる」ということ。これもまたADHDの特質のひとつ「過集中」なのである。
(100ページ)

⇒☆「過集中」になる対象を見つけるだけでも、人生がずっと、ぐっと生きやすくなると思いました♪

あらゆるものが比較的安いコストで体験できるなら、興味のあるものが見つかるまでどんどん体験していけばいい。飽きたらそこで止めても全く構わない。
(113ページ)

⇒☆「やりたいと言ったからには最後までやり通す」というのが馬鹿らしく思えてきました^^;

普通の人間が経営者になるのは難しくなってくるはずだ。進取の精神に富み、過去の失敗に囚われず、思いついたことは何でもやってみる。これはまさに、発達障害を抱える多くの人が持つ特性だ。 
つまり、ADHDやアスペルガー症候群といった人々こそ、これからの時代にこそ求める人材ではないだろうか・そんな予感を私は持っている。
(129ページ)

⇒☆これからは、発達凸凹のある人がリスクに怯えることなく、もっと軽やかに経営者を目指す仕組みを今後構築する必要がありますね。

2018年3月13日火曜日

【開催レポート】話の見える化を活用したサポート講座

    皆さん、こんにちは。今回は参加者の方からご好評を頂いている、3月4日に開催された「話の見える化を活用したサポート講座」の報告レポートをいたします。今回も20名の参加者がご参加くださり、楽しく、そして参加者同士が学び合う場となりました。


 「話の見える化」を用いると、対話をリアルタイムで描き出すことができ、場の活性化や対話を促し心の深いレベルで話せます。

    最近話題になっている、発達障害。家庭で学校で会社で…。現代社会のなかで生きづらいと感じておられる方が多く、それを「話の見える化」によってサポートできないか、と思ったのが開講のきっかけです。

    講師は各地でグラフィッカーとして活躍しておられ、One day cafe.kyotoの共同代表でもあるでむさんです。


    今回の講座では自己紹介や説明などの後、紙に書いて話す練習としてA4サイズの紙に最近あった嬉しいことを描いてもらいました。皆さん好きな色のペンやイラストを用いて、何があったか聞きたくなるような魅力的な書き方をされていました。その後のグループ内発表もとても盛り上がり、のびのび描くとのびのび話せることが実感できました。


    そして壁に模造紙を貼って「話す・聞く・書く」の3役に分かれて実践をしました。テーマは自由です。聞きながら大きな紙に垂直に同時進行で描くという、一見難しそうなワークです。しかし、書く人の様子を見ながら話したりお互いにアドバイスしたりと、グループで協力して取り組まれていました。また他の方が描かれたのを見ることによって、色々な表現方法があることも分かりました。


    時間が経つにつれ、参加者の皆さんが「話の見える化」に対する関心が高まり、また場の空気も高まっていくのを心より感じました。今回は大人の方に交じって、小学5年生の女の子にも親子で参加して頂きました。描くこと・話すことを楽しんでもらえたようで、会場には和やかな時間が流れていました。ファシリテーショングラフィックに特別な技術は必要なく、「やってみよう」という気持ちが大切だと思います。


    また参加者の方からは、「想いを伝える方法はたくさんあることが分かった」「描いてもらうことにより受け止めてもらえたと感じることができた」「自分のことを振り返る貴重な時間になった」というお声を頂きました。他にも「講座を通して他の参加者の方と仲良くなれて嬉しい」「絵や文字で表現することによって、新しい発見があった」「早速サポートに活用しようと思う」といったご感想を頂きました。


 「話の見える化」としてご紹介した グラフィックファシリテーションは、発達障害に万能薬という訳ではありません。しかし発達の方だけでなく今の時代に必要とされる、物事を整理してポジティブに捉える・相手の感情を大切にするといったことができるようになる、1つの有効な手段です。みなさんそれぞれの目的に合わせてご活用頂ければと思います。ご参加頂き、誠にありがとうございました。


    今悩みを抱えている、聞いたことがあり興味がある、新しいことにチャレンジしたい…。少しでも心惹かれた方は是非ご参加下さい。皆さんのお越しをお待ちしています。

凸凹フューチャーセンター
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2018年2月25日日曜日

【発達凸凹 Book#27】 『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 大人の発達障害 日常生活編』



発達凸凹に関する本は本当にたくさんあって、この本がベスト!ということは言えません。でも、もしかすると一冊の本が、生きづらさを感じている人の扉を開いてくれるかもしれない…という思いを込めて、本をご紹介します。

本の紹介


『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 大人の発達障害 日常生活編』
宮尾益知=監修/河出書房新社


河出書房新社の「親子で理解する特性シリーズ」


本書は、河出書房新社が発行している「親子で理解する特性シリーズ」の内の1冊です。
以前にこの発達凸凹Bookのコーナーでも、本シリーズの一つ、『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 職場の発達障害』を取り上げました。



今回ご紹介する本は、ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LDの特性を理解して、日常生活の「大変さ」を減らす対応策と適切なサポートの方法について書かれたものになります。

本書の構成


第1章では、発達障害の特性は基本的に変わらないことや女性の発達障害は気づかれにくいこと、トラブルの原因は"大人の常識"が通じないことなどが書かれています。
また、空気が読めない、約束が守れないといった日常生活でのさまざまな場面における特性の強弱をチェックする「日常生活チェック」という項目が10個ほど登場します。

日常生活で起きやすい代表的なトラブル


第2章では、日常生活で起きやすい代表的なトラブルと対応策(ASD編)。ASDの人が起こしやすいトラブルである、「深い人間関係が気づきにくい」点を取り上げ、サポートのポイントについて解説しています。

第3章は、日常生活で起きやすい代表的なトラブルと対応策(ADHD編)。
ADHDの人が起こしやすい代表的なトラブルである、「約束が守れない」「片付けが苦手」「毎日の家事が苦手」「金銭の管理が苦手」の4項目について、具体的なサポートの方法について解説しています。

交友・恋愛編


第4章は、交友・恋愛編。ASD、ADHDの人が友人との間でトラブルになる理由を説明した上で、会話のスキルを上げるポイントをASD、ADHDに分けて解説しています。

また、恋愛のトラブルについては、特にASDの人が直面することが多い「異性との付き合いが長続きしない」・「食事のマナーが守れない」の2点において注意すべきことも取り上げています。

子育て・夫婦関係編


第5章は、子育て・夫婦関係編。子育てにはマニュアル特性のためにも正解もなく、日々成長し変化していく子どもへの対応に戸惑ったり悩んだりしてしまいます。

また、特性のために夫が妻の状況を理解できなかったり、常に自分の好きなことを優先して子育てや家事を手伝わないために、トラブルになってしまう場合があります。

そんな子育ての悩みや子育てを手伝ってもらうためのサポートの方法については、ポイントを絞って解説しています。

夫婦関係編では、①夫がASDの場合、②妻がASDの場合、③夫がADHDの場合、④妻がADHDの場合の4パターンに分け、各々のパターンでよくあるトラブルとそのトラブルを回避するコツを紹介しています。

二次障害と薬物治療


第6章は、二次障害と薬物治療についての章です。二次障害については、大人の発達障害の人がかかりやすい主な二次障害と二次障害に効果のある主な薬が紹介されています。

また、大人のADHDに効果がある薬物治療(特にコンサータとストラテラ)やカウンセリング、環境調整についても書かれています。

専門医からのアドバイス


第7章は、専門医からのアドバイス。監修者の宮尾氏が、多数の発達障害の方を診察してきた専門医として、大人の発達障害の方がもっと楽に生活できて、支援する方や企業の担当者にとっても参考になるためのアドバイスを綴っています。

書評


見開き2ページで1トピック+大きなイラストで読みやすい♪


見開き2ページにトピックを1つに絞って解説するという書き方なので、1ページ目から読む必要がなく、気になった箇所から読み進めていくことができます。読書にハードルの高さを感じている人にとってとっつきやすい書物になっているなと感じました。

大きなイラストがふんだんに使われているので、文字が苦手という方にも読みやすいと思いました。

ASDの人には予習を、ADHDの人には復習を


また、日常生活を送る上で生じるトラブルやその背景、サポートのポイントについて、ASDとADHDに分けて解説しているのも印象的でした。

中でも、「ASDの人は物事を概念化することが苦手なので、一見同じようなケースに思えることも、一つひとつ予習して覚えていく必要がある。ADHDの人は、考える前に行動してしまうという特性があるので、失敗してもそれを責めずに、後から復習させることで、次からはうまくできるようになる」という指摘は非常に興味深い指摘だなと感じました。

この「ASDの人には予習を、ADHDの人には復習を」という視点を持つのもサポートする上での重要な点だなと思いました。

発達障害の人の中に閉塞社会にイノベーションを起こす人材が!


監修者の宮尾氏が第7章で、「日本では多くの企業がイノベーションやブレイクスルーを起こせる人材がいないと悩んでいるが、発達障害の方の中からそういう人を探し出すことが一つの方法になるのではないか」と指摘したのも強烈なインパクトを受けました。我がOne day cafe.kyotoも、閉塞社会にイノベーションを起こす場の一つになればいいなと感じました♪

引用とコメント


以下は書籍からの引用とコメントになります。
「⇒☆」から始まる箇所が引用に対するコメント文です。

ADHDの女性は、子供の時から男性に比べて「多動性」「衝動性」の特性が目立ちません。しかし、「多動性」が「おしゃべり」に現れたり、「衝動性」が「移り気」や「つい、うっかり~」に現れる場合が多いようです。 
こうした特性は思春期前後から現れてきます。その結果、女性同士の会話で友人の秘密をつい「暴露」してしまうなどの不注意な発言や人の話に割り込んだりして周囲とトラブルになる場合があります。
(49ページ)
⇒☆多動性や衝動性の特性が目立たないからと言って、ADHDの女性が生きづらさを抱えていないわけではなく、むしろ女性特有のコミュニケーションの中で生きづらさを抱えることがあるということですね。

ASDの方には予習が必要であれば、ADHDの方には復習が重要です。失敗してもそれを責めずに、後から復習させることで、次からはうまくできるようになるのです。
(61ページ)
⇒☆「ASDの人には予習、ADHDの人には復習」。各々の特性をもつ人をサポートする上でのポイントが端的かつ分かりやすく表現されてますね♪

顔を見ながら相手の感情を読み取ることが苦手なので、1対1で向き合って話すよりも、横に並んで、一緒に対象となるものを見ながら話をするというのがよいでしょう。 例えば、スケジュール表や図などを見ながら説明すると、緊張せずに理解してもらいやすくなります。 
言い方のコツとしては、アドバイスをするというよりは、「私だったら、こうするな」とボソッとつぶやくような言い方が良いでしょう。例えて言うなら、クイズ番組を一緒に見ながら、ヒントとなるようなことをボソッとつぶやくといった感じです。 
「いいことを聞いた。もうけた、得した」と思えば、彼らは不思議なほど素直に受け入れ実践します。自分の得にならないことを強制されることには、非常に苦痛を感じますが、社会的な評価や経済的なメリットがあるとわかれば行動するのです。「〇〇すればあなたが得するよ」といったような言い方も効果的です。
(61ページ)
⇒☆であるならば、「私だったら、こうやって愉しむな」とか、「〇〇すればあなたも愉しむことができるよ」という言い方をするのもいいのかもしれませんね♪

ASDの人と結婚する場合は、最初に家庭内の役割分担をしっかり話し合って決めておくことがとても大事になります。ASDの人は、家事も自分の仕事と認識すれば、きちんとこなす場合が多く、決められた家事についてはしっかり手伝ってくれるはずです。
(83ページ)
⇒☆この家庭内の役割分担も、子どもが生まれるなどのライフステージが変化する度にしっかり話し合って決めておくことも大切ですね!

人間関係で大きなストレスを抱えている人は、ペットを飼うことでリラックスできる人もいます。人間が相手だと緊張する人も相手がペットだとリラックスして話しかけられるようです。生き物が飼えない場合は、ぬいぐるみやロボットでも構いません。
(100ページ)
⇒☆One day cafe.kyotoでも以前、動物療法に関する記事を「発達凸凹速報」として、facebookページにてご紹介しました。なるほど、ぬいぐるみやロボットでもいいのですね。

脳神経科医、オリヴァー・サックス博士の著書『火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者』には、自らを「火星の人類学者のようだ」という自閉症の動物学者の話が出てきます。 
彼女は人の気持ちや表情が読めず、複雑な感情やだましあいが理解できないため、"厖大な経験のライブラリー"を作り上げ、それを参照することで普通の人の行動様式を分析し、解読しながら生活しているといいます。 
「自分は火星人で、地球人の中に紛れ込んで彼らのことを勉強している」くらいの気持ちで人と接するというのも、一つのヒントになるかもしれません。
(107ページ)
⇒☆普通の人の行動様式を分析し、解読しながら生活するのは中々1人ではできないことですので、当事者会に参加するなどして、「普通の人はこういった場面ではこう考えるのでは?」という意見を出し合いながら、複数人で普通の人の行動様式を分析するのもいいと思います。

今、日本では、多くの企業がイノベーションやブレイクスルーを起こせる人材がいないと悩んでいます。私は発達障害の方の中からそういう人を探し出すことが、一つの方法になるのではないかと思っています。一部の企業では、既にそうした取り組みも始まっているようです。
(111ページ)
⇒☆発達凸凹さんのポテンシャルを感じさせる、大変勇気づけられる一文ですね。イノベーションを起こせる人材を発達凸凹さんの中からどう見出すかが今後の日本社会に問われていると思います。

2017年11月23日木曜日

【発達凸凹 Book#22】 『会社の中の発達障害』



発達凸凹に関する本は本当にたくさんあって、この本がベスト!ということは言えません。でも、もしかすると一冊の本が、生きづらさを感じている人の扉を開いてくれるかもしれない…という思いを込めて、本をご紹介します。

本の紹介


『会社の中の発達障害』
星野仁彦=著/集英社

本書は、近年書籍やマスコミでも取り上げられることが多い大人の発達障害、特に遅刻や〆切を守れない、デスク周りが乱雑などといった、会社における発達障害についてまとめた一冊になります。

第1章では、大人の発達障害について近年注目されるようになった要因を3つ挙げています。すなわち、①軽度まで含めると出現率が高いため(10%以上)、②ストレス耐性が低く、思春期以降に二次障害や合併症を発症しやすいため、③高学歴でも、社会適応が困難で就労してから問題が生じやすいため、という3つが要因として挙げられています。

第2章では、大人の発達障害の種類(ADHD・アスペルガー症候群)とそれらの特性について解説しています。ADHDでは、①不注意、②多動性、③衝動性の3つの特性が、アスペルガー症候群では、①社会性・対人関係、②コミュニケーション、③想像力、④感覚過敏・鈍感、⑤協調運動の不得手の⑤つの特性を紹介してます。

第3章では、発達障害が疑われる人たちの職場での振る舞いや仕事ぶりなどの具体例を挙げて、周囲がどのように対応すればよいかを提案しています。

第4章では、発達障害を抱える著者自身の幼少期からこれまでを記しています。祖母に向かって「お前、早く帰れ!」と言い放った三歳児のころや、高校野球の勝利予想にハマった中学生時代、下宿にハエの大群がわいた医学部学生時代などのエピソードが赤裸々に述べられています。

第5章では、発達障害の人が思春期・青年期以降に併発しやすい病気を紹介するとともに、発達障害の治療法として、心理教育と環境調整法、認知行動療法や自助グループへの参加、薬物療法について解説しています。

書評

「星野流根掘り葉掘り」が紐解く多様な「会社の中の発達障害」


職場での振る舞いや仕事ぶりなどの具体例が本当に豊富(その数なんと25個!)に挙げられており、一口に「大人の発達障害」と言っても一人ひとりの特性が多様であり、それ故に直面するトラブルや困難も多様であることを改めて実感しました。

また、一つひとつ具体例について、当事者本人の話だけにとどまらず、幼少期からのエピソードや仕事ぶりに対する周囲の評価などについても述べてあります。

これは、「とことん話を聞いて、これでもかとしつこく尋ねる」問診中心の診察を心がけている著者だからこそ書ける部分かなと感じました。ちなみに、著者の入念な問診は、「星野流根掘り葉掘り」と言われるほどだそうです(笑)

興味を持てる分野を持つことの重要性


そんな著者自身も不注意優性型のADHDで、ひとり暮らしや試験勉強などで学生時代には大いに苦労しています。そんなときに威力を発揮したのが、興味を感じる対象には過剰ともいえる集中力が向けられ、もくもくと努力することができる発達障害の特性でした。

著者は、中学生時代に高校野球の勝利予想に夢中になり、全国の都道府県の予選試合を観戦し、データを分析し、優勝高校を予想する作業に没頭します。

そのときの「徹底的に集中して分析する」という経験が、医師国家試験の過去10年分を徹底的にリサーチしてヤマを張ることに大いに役立ったようです。

高校野球の勝利予想という、今すぐに役立つとは思えないことでも、将来にどういう影響があるかは誰にもわからないものです。損得や合理性にとらわれず、興味の持てる分野を見つけることは発達障害の人には必要だと感じました。

引用とコメント


以下は書籍からの引用とコメントになります。
「⇒☆」から始まる箇所が引用に対するコメント文です。

ADHDは、行動面だけに問題があるのではなく、社会性、学習面、認知機能、運動機能などのバランスが不具合である状態をいいます。そうような症状が、社会生活に適応することのハンディになりやすいということなのです。私を含め学者や研究者の中では、発達障害のことを、「発達アンバランス症候群」と呼ぶべきだという声が増えてきました。
(28ページ)
⇒☆確かに、「障害」という言葉のインパクトやネガティブなイメージからも、「発達アンバランス症候群」や「発達凸凹」と呼ぶ方がいいと感じることがありますね。同時に、アンバランスや凸凹を持っていても生きづらさを感じることなく、アンバランスさや凸凹具合を愉しみながら生きていける社会の仕組みを作り出していくことも大切ですね♪

(著者の;註)母も間違いなく発達障害(ADHD)だと考えられます。父は多動・衝動性優性型、母は不注意優性型といわれるタイプで、このふたつのタイプはなぜか妙な親和性があり、引き合うのです。いじめっ子といじめられっ子、DV(夫婦や内縁関係、恋人などの近親者間に起こる暴力)加害者と被害者という関係になる傾向があります。
(138ページ)
⇒☆元来、人懐っこいというADHDの基本的な特性の上に、多動・衝動性優性と不注意優性というそれぞれの特性が作用して、いじめやDVの関係ができあがる傾向があるのかもしれませんね。

今役に立つとは思えないことでも、将来にどういう影響があるかは誰にもわからないものですので、損得や合理性にとらわれず、興味を持てる分野を見つけることを、発達障害の人にはおすすめします。
(144ページ)
⇒☆先日のOne day cafe.kyotoで、ゲストのウヌマさんがおっしゃっていた「計画的偶発性」と通じる部分かもしれませんね♪


「気づくこと、受け入れること、そして情熱を注いで生きること」
 本人や家族、職場を含む周囲の人間が、現実に気づき自分を冷静に見つめなおすことができれば、治療の効果も上がり、改善の方向に向かう可能性は十分にあります。
(161ページ)
⇒☆そしてゆくゆくは、「改善自体を愉しむこと」ができるようになれば更に素敵ですね♪確か、先述したウヌマさんも、自称「改善オタク」でしたね(^_^;)

全国的に展開している大人の発達障害の自助グループとしては次のものなどがあります。
 ①えじそんくらぶ ADHDの人とその家族などを応援
 ②アスペ・エルデの会 発達障害者とその家族や関係者を支援
 ③大人のADD&ADHDの会 ADHDの人の実態を把握し支援
(183ページ)
⇒☆上記3つに加え、小規模ながら地域で活動している自助グループとすぐに繋がれる仕組みや支援が必要ですね!特に地方では切実な課題でしょう。

2017年11月16日木曜日

【発達凸凹 Book#21】 『大人のADHD』



発達凸凹に関する本は本当にたくさんあって、この本がベスト!ということは言えません。でも、もしかすると一冊の本が、生きづらさを感じている人の扉を開いてくれるかもしれない…という思いを込めて、本をご紹介します。

本の紹介


『大人のADHD』
岩波明=著/ちくま新書

日本テレビ系列「世界一受けたい授業」で出演された医師、岩波明氏の著書になります。岩波氏といえば、著書『発達障害』(文春新書)が有名かもしれませんが、今回ご紹介するのは、『発達障害』のおよそ1年半前(2015年7月)に書かれたものになります。

勤務する昭和大学附属烏山病院にてADHD専門外来を担当する岩波氏が、専門医の立場から「大人のADHD」について解説する一冊になります。

ADHDとは何か、特有の症状とはどんなものか、ASD(自閉症スペクトラム障害)との相違点は何か、どんな治療法があるのか。
それらの問いに、豊富な科学的データと実際のケースを紹介しながら解説しています。

書評

日本にはADHDの人が300万人以上いるという推定


書籍のサブタイトルに、「もっとも身近な発達障害」とあるように、ADHDの患者数は予想以上に多く、日本には300万人以上の患者がいると推定されていることを著者は指摘しています。

まずは、この患者数が予想以上に多いということをもっと多くの人に認識してもらえればと感じました。

看過できないADHDと他の精神疾患の併存率の高さ


また、ADHDには、うつ病や不安障害、アルコール依存症などのさまざまな精神疾患が併存するケースがひんぱんにみられることも看過できない指摘です。

ADHDに他の精神疾患が合併した場合、ADHD自体には注目されずに、あるいは見逃されて、別の精神疾患への対応が中心となりやすく、ADHDの特性を把握しないで治療を行うと、十分な改善を得られないというケースが多々あるようです。

なので、ADHDを専門に診ることができる医師が今後増えていくことに期待したいですね。

ADHDの治療におけるグループ療法の有益さ


本書ではADHDの治療について、1章を設けて解説しています。アトモキセチン(商品名ストラテラ)やメチルフェニデート徐放剤(商品名コンサータ)などの薬物療法に加えて、心理教育や認知行動療法、コーチングやグループ療法なども紹介しています。

特にグループ療法については、昭和大学附属烏山病院で成人ADHD患者に対して行われているグループ療法が紹介されています。プログラム作成前の患者への聞き取りからプログラムの作成、参加した患者の変化まで詳細に記述されており、グループ療法の有益さが実感できます。

薬物療法のみならず、上記のグループ療法を含めた心理社会的な療法を実施する治療施設を充実させることが、今後の大きな課題になりそうですね。

新しい活路を切り開く可能性を秘めた「トリックスター」


「おわりに」で、岩波氏は、閉塞した状況を打ち破り、新しい活路を切り開く可能性を秘めたADHDの人を「トリックスター」と呼んでいます。

ADHDの人が持つ可能性を信じ、彼らが自身の力を最大限に発揮できるような仕組みを生み出していくことが今後求められていますね。

引用とコメント


以下は書籍からの引用とコメントになります。
「⇒☆」から始まる箇所が引用に対するコメント文です。

私自身ワンマンプレーに徹することができる職場環境において、目覚ましい成果をあげている ADHDの人を何人か知っている。この場合、過剰に集中する傾向がプラスの面として現れるのである。
(12ページ)
⇒☆ならば、ADHDの人がワンマンプレーに徹することができるような職場環境を選択・構築できるような支援も、「選択肢」の一つとして充実させていく必要がありますね。

リアルな世界において、ADHDは、発達障害に分類される「疾患」という枠組みを超えた重要な役割を担っている。どういうことかと言えば、困難な現実世界の局面において、沈滞した閉塞状況を打ち破るのは、ADHDの気質を備えた人たちであるからだ。彼らは周囲の思惑を気にしないで、ためらわずに決断し突進を繰り返すのであるが、その過剰な試みは、失敗に終わることもある一方で、新しい活路を切り開く契機になる。
(13ページ)
⇒☆そうであるならば、ADHDの人がためらわずに決断し突進を繰り返すことができるようなバックアップと、彼らが突進を試みて切り拓いた活路の整備を担おう人材が必要ですね。

ADHD患者は、うつ病とほぼ同数存在しているわけであり、その総数は、わが国全体でみれば、300万~400万人というかなりの数とある。もちろんこの数百万人のADHDの人すべてに治療が必要というわけではないが、少なくとも、ごく少数にみられる疾患ではなく、数多くの人に影響を与えている重要な疾患であることは認識すべきである。
(43ページ)
⇒☆この「ごく少数にみられる疾患ではなく、数多くの人に影響を与えている重要な疾患である」ことは、国民全体が認識しておいてほしいですね。

言うなれば、彼ら(ADHDの人;註)の頭の中も多動なのである。ADHD患者の「心」の中では、さまざまなまとまらない衝動的な考えが、常に起こっては消えている。よって、対話において、「相手の話をよく聞いていない」「話の一部が飛んでしまう」ということが起きやすい。このため、児童期から思春期になるにつれて、次第に対人関係がうまくとれなくなる傾向がある。つまり、「信頼できる」相手とみなされなくなることが多くなる。
(48ページ)
⇒☆テクノロジーが進化して、頭の中の考えをすぐに可視化できるようなツールが広まれば、ADHDの人の思考を即座にまとめ、他の人にわかりやすく伝えることができ、コミュニケーションがよりよく取れるようになりますね。
わがOne day cafe.kyotoで活用しているファシリテーション・グラフィックも「考えの可視化」の有効なツールです!

米国における調査では、ADHDには気分障害(うつ病、躁うつ病)などが38.3%、不安障害(パニック障害、社交不安障害など)が47.1%、物質使用障害(薬物依存、アルコール依存など)が15.2%合併することが報告されている。これはかなりの高率である。
(88ページ)
⇒☆ADHDと他の精神疾患の併存率の高さは多くの人が認識し、周囲の人は、併存する可能性のある精神疾患の予防に配慮できればいいですね。

心理教育は、個人面接の場面でも可能であるが、グループで行うことにより効果が高まるケースが多い。治療者からの「講義」よりも、同じ疾患に悩んでいる他の当事者の発言のインパクトが強いケースが多いからである。本人にとっては、自分だけでなく、他にも同様の症状で苦しんでいる人がいることが共感を呼び、自己理解が深まりやすい。
(175ページ)
⇒☆さらに、グループだと、他の当事者を観察することで学ぶことも多いと思われます。

認知行動モデルでは、生活上の機能障害が生じるのには、二つの経路があると仮定されている。一つはADHDの症状によって、行動面における対処法を有効に活用できないために、さまざまな機能障害が起きるという経路である。もう一方の経路では、ADHDの主症状によって失敗経験を繰り返すために否定的な認知や信念を持ちやすくなり、その結果として抑うつや不安などの精神症状が出現し、結果として機能障害が起こるというものである。このような機能障害を防ぐためには、ADHDの症状を投薬によってコントロールするとともに、具体的な生活場面における対処方法を身につけ習慣化していくような継続的な努力が必要となる。
(198ページ)
⇒☆この「具体的な生活場面における対処方法を身につけ習慣化していく」ことに気づくきっかけの一つとして、当事者会が有効に機能する場面があると思います。「継続的な努力」ではなく、習慣化の過程そのものを楽しめれば素敵ですね♪

私自身が認識したことは、ADHDを含む発達障害と呼ばれる人たちは、障害に関連する「症状」があっても、社会の中で輝くことのできるさまざまな「能力」や「素質」を兼ね備えていることであった。(中略)今の日本社会や日本人に「問題」が存在することは確かであるが、まず本人や家族が自身の「力」や「可能性」に気がつくことがなにより重要なことなのである。
(233ページ)
⇒☆これからは、ADHDの人が、自身の「力」や「可能性」に気づく仕組みを構築することが大切になってくると思います。

現実世界において、ADHDは発達障害に分類される「疾患」という枠組みを超えた重要な役割を担っている。どういうことかと言えば、ADHDは「トリックスター」の役割を果たしているからである。トリックスターとは、元々文化人類学の用語であり、山口昌男氏がキーワードとして用いていた。トリックスターは本来「道化」という意味であるが、転じて、俗なる世界と聖なる彼方をつなぐもの、あるいは、この世界の秩序を一瞬にして変化させる心理的な「装置」を意味するようになった。深層心理学の立場から、C・G・ユングは、トリックスターを彼の定義した「元型」の一つであると定義している。トリックスターは、現実世界の支配者である「王」の前で道化を演じるが、現世の秩序を否定しても罰せられることはない。それどころか、道化の言動は多くの人々の先駆けとなり、秩序の逆転を起こすこともある。 実際の世界でも、沈滞した閉塞状況を打ち破るのは、ADHDの気質をそなえたトリックスター達である。彼らはためらわずに決断し突進を繰り返すのであるが、その過剰な試みは、新しい活路を切り開く契機になる
(235ページ)
⇒☆この「トリックスター」という表現は、ADHDの人の特性をポジティブに捉えて、ユーモアを添えた表現だと感じました♪

2017年10月31日火曜日

【発達凸凹 Book#18】 『オトナの発達障害大図解』



発達凸凹に関する本は本当にたくさんあって、この本がベスト!ということは言えません。でも、もしかすると一冊の本が、生きづらさを感じている人の扉を開いてくれるかもしれない…という思いを込めて、本をご紹介します。

本の紹介


『オトナの発達障害大図解』
藤田潔・古川修・森脇正詞=著/幻冬舎

本書では、発達障害、特にASDとADHDについての基本的な知識をまとめた上で、投薬などの治療法や技能訓練、職場復帰の方法、社会生活に適応するための対処法をわかりやすく解説した本です。

発達障害の人が無理なく実行するためのポイントが、1項目ずつ見開き2ページでイラストつきで説明されており、スムーズに読み進められる構成になっています。

書評


本書では、著書の施設で取り組んでいる、「発達障害専門のリワークプログラム」で実際に使用されている「生活見直しシート」などのチェックシートが紹介されています。これらのチェックシートは、リワークプログラムを受講していない読者が自分一人でも取り組めるようになっているのは助かりますね。

発達障害のリワークプログラムの現状と普及への期待


発達障害専門のリワークプログラムですが、普及しているとは言えません。発達障害のリワークプログラムは、うつ病など気分障害のプログラムに比べて個別対応がより重要となります。

その分気分障害のプログラム以上に人件費が必要となりますが、現時点では残念ながら診療報酬には十分に反映されていません。このことも、発達障害のリワークプログラムが全国的に普及しない理由の一つのようです。

しかし著者らは、発達障害に苦しみ、仕事を続けられず休職してしまった人たちのためにも、リワークプログラムを採算度外視で行う意味があると考え、実際に勤務する施設で、リワークプログラムを実施しています。

まずは、採算度外視で取り組まれている著者の施設の方々に敬意を評したいと思います。今後、診療報酬体系が整備されて、発達障害専門のリワークプログラムが全国に普及していくことに期待したいですね♪

引用とコメント


以下は書籍からの引用とコメントになります。
「⇒☆」から始まる箇所が引用に対するコメント文です。

国立精神・神経医療研究センターの調査によると、成人になってから精神科を受診して発達障害と診断された患者は、2002年から2008年の6年間で約10倍に増えました。
(はじめに)
⇒☆「発達障害」という概念が身近になったのが大きな要因かもしれませんね。

まずは「ものを減らす」ことから始めます。書類、文具、本などと、散らかっているものを種類別にひとつの場所にまとめ、「いるもの」「いらないもの」「迷ったもの」に分けていきます。作業時間も10分くらいに決め、ストップウォッチで測りながら片付けをしました。
(56ページ)
⇒☆「迷ったもの」というカテゴリーを設けておくのも、作業時間を10分に決めてストップウォッチで測りながらやるのも有効な手立てですね♪

たとえば触覚に過敏さがある場合、軽く触れるマッサージよりも、深く圧力をかけるようなマッサージを受ける方がリラックスにつながります。軽く触れると過敏さが助長され、かえって不快に感じることもあるからです。
(89ページ)
⇒☆触覚過敏の場合、触れること自体がタブーだと思っている人も多いかもしれませんね。けれども深く圧力をかけた方がよい場合もあるのですね。

「子供の頃から大好きなこと」「無理せずずっと続けられること」「豊富な知識がある得意分野」に照準を定めて、特性にマッチした仕事を選ぶことが大切です。
(119ページ)
⇒☆「子供の頃から大好きなこと」なら、それがこれからの人生において、いきなり「嫌い」になることは少ないと思うので、有効なアプローチ!

医療に携わる立場として申し上げると、診療報酬の問題もあります。発達障害のリワークプログラムは、うつ病など気分障害のプログラムに比べて個別対応がより重要となります。その分気分障害のプログラム以上に人件費が必要となりますが、現時点では残念ながら診療報酬には十分に反映されていません。このことも、発達障害のリワークプログラムが全国的に普及しない理由の一つです。
(129ページ)
⇒☆診療報酬の問題も発達障害のリワークプログラムが普及しない要因だったみたいですね。今後は、診療報酬体系が整備され、発達障害のリワークプログラムがどんどん普及していくことが望まれますね。